(公開日:2021-03-01)
(更新日:2022-11-20)
太陽光パネル(太陽電池モジュール、ソーラーパネル)および太陽光発電設備の廃棄に関して、以下のガイドラインへの準拠が関連事業者に求められます。
以下ではその概要を解説していきます。
環境省は太陽電池モジュールの適正なリユース、リサイクル・処分の確保のため、「太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドライン(第二版)」を公表しています。
環境省では固定買取価格制度が始まった直後の平成27年には既に適正処分に関する検討を進めていました。それに引き続き、前述のガイドライン『太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドライン(第一版)』が平成28年4月に公表されています。
その後、総務省勧告(平成29年9月)や近年多発する災害等を踏まえ、埋立処分方法や有害物質に関する情報伝達、災害対応策についての内容を見直しが行われています。
本ガイドラインでは、太陽光パネルのリサイクルを実施するにあたっての事業者の責務や注意点などが規定されています。
また使用済太陽光パネルの有効利用としてリユースの推進が期待されていますが、リユースと称して海外への不適切な輸出の可能性や、リユース可能でも処分されるケースもあるといった問題が指摘されていました。
環境省では適切なリユースを促進するためのガイドラインを策定し、2022年5月に『太陽電池モジュールの適切なリユース促進ガイドライン』が公表されています。
本ガイドラインでは、リユース品として流通させる場合の条件や対処すべき内容、不適正な輸出を防止などの事項が記載されています。
資源エネルギー庁においても、太陽光発電設備の計画時における『事業計画策定ガイドライン(太陽光発電)』が公表されています。平成29年3月に初版が策定された後に改定が加えられ、現在は2022年4月に最新版が改定されています。
本ガイドラインは太陽光発電設備の企画立案から、設計・施工、運用・管理、地域との関係、そして撤去・処分に至る、設備のライフサイクル全体に関してのガイドラインとなっています。
ガイドラインの第2章第5節に、太陽光発電設備の撤去・廃棄に関して以下の内容に関して以下に定められています。
また将来に廃棄・リサイクルが実際に行われるか懸念(特に費用面)があることから、経済産業省において「廃棄等費用の積立制度」の議論が進み、2022年4月1日に改正の『改正再エネ特措法施行規則(電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法施行規則、平成24年経済産業省令第46号)』に基づき、廃棄費用の積立制度が開始されました。
積立てに関する業務を実施に際しては、資源エネルギー庁から『廃棄等費用積立てガイドライン』が公表されています。
なお、廃棄費用の外部積立制度の関しては、別コラム(廃棄等費用積立てガイドラインの概要)でも概要を紹介しています。
一般社団法人 太陽光発電協会(JPEA)では、太陽光発電設備を撤去・廃棄する発電事業者へ向けて、以下の情報を提供しています。
廃掃法に基づき太陽光パネルを処分する際に、処理業者に含有化学物質の情報提供が必要となる場合があり、パネルメーカーに対しての情報開示を推奨しています。本ガイドラインに基づき情報提供しているメーカーを確認することができます。
また太陽光パネルの適正処理が可能な産業廃棄物中間処理業者の公表もされています。
当サイト(PVリサイクル.com®)においても、各社ホームページの確認や独自調査により太陽光パネルのリサイクルを実施が明確な事業者を紹介しています。
2022年4月に改正再エネ特措法が施行され廃棄費用の積立制度が開始(早い案件で2022年7月より積立開始)され、一定の廃棄費用が担保されることから不法投棄のインセンティブは減少していると考えられます。しかしながら太陽光発電設備の開発・運営を含めた課題は多く、特に地方との共生という面でも課題を抱えています。
こうした状況において、政府では2022年4月から『再生可能エネルギー発電設備の適正な導入及び管理のあり方に関する検討会』が開催され、現在の課題と将来への取組みが議論された後に提言案として纏められています。
引き続き『再生可能エネルギー長期電源化・地域共生ワーキンググループ』として議論が進んでおり(2022年11月時点)、廃棄やリサイクルに関しても実際の取組みに期する議論が期待されます。
地方自治体でも太陽光発電を積極的に進めるのと合わせて、廃棄・撤去時における注意喚起や独自で条例を制定するなどの動きもあります。発電事業者においては、それぞれの自治体での規制やガイドラインの確認・遵守が求められます。
東京都では戸建て住宅への太陽光パネル設置義務化と合せて撤去・廃棄の課題が議論されるなど、地域・自治体での取組みも今後進むと期待されます。
太陽光発電設備の撤去・廃棄に関する問題意識はFIT後の早い段階で指摘されていました。しかし実際のガイドラインの周知が不十分だったことや廃棄費用の積立が行われていない現状など、多くの課題も浮き彫りになっていました。
中間処理を行う事業者による技術開発やリサイクルシステムの構築が望まれる一方で、今後は発電事業者側も排出者責任が厳しくなると考えられます。
太陽光発電に関する制度が大きく変わる中、持続可能なシステム実現のためにはライフサイクル全体での経済性や環境負荷も考慮し、太陽光発電に関わる全ての事業者が法規やガイドラインを遵守することは勿論、環境や地域社会との調和が求められます。