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太陽光発電設備の廃棄に関するガイドライン

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(公開日:2021-03-01)
(更新日:2024-12-26)

太陽光発電設備(太陽光パネル)の廃棄・リサイクルに関して、環境省や業界団体などから各種ガイドラインが公表されており、関連事業者においては実際の作業などにおいてガイドラインの理解と準拠が求められます。

以下では、太陽光発電設備の廃棄に関するガイドラインに関して、概要を紹介していきます。

環境省によるガイドライン

環境省は太陽電池モジュールの適正なリユース、リサイクル・処分の確保のため、「太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドライン(第三版)」を公表しています。

「太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドライン(第三版)」について(引用元:環境省

環境省では固定買取価格制度が始まった直後の平成27年から適正処分に関する検討を進めており、『太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドライン(第一版)』が平成28年4月に公表されています。
その後、総務省勧告(平成29年9月)や近年多発する災害等を踏まえ、埋立処分方法や有害物質に関する情報伝達、災害対応策についての内容を見直しや、その後実施された検討会や調査事業などの内容が反映され、2024年8月に第三版が公表されています。

本ガイドラインでは、太陽光パネルの解体・撤去、リユース、収集・運搬、リサイクル、埋立処分等の実施に際しての流れ、事業者の責務や注意点などが規定されています。

  • 太陽光発電設備のリサイクルの全体像
  • 基本的な用語や太陽光パネル(太陽電池モジュール)の構造
  • 発電事業終了後における設備の解体、廃棄に関する注意事項
  • 準拠すべき法規等、産業廃棄物としての取扱いに関する説明
  • 太陽光パネルのリサイクルの具体的事例
  • 太陽光パネルのリユースに関する事項
  • その他関連するデータ等
環境省ガイドライン抜粋
ガイドライン抜粋(引用元:環境省

また使用済太陽光パネルの有効利用としてリユースの推進が期待されている一方で、リユースと称した海外への不適切輸出の可能性や、リユース可能でも処分されるケースもあるといった問題が指摘されていました。
環境省では適切なリユースを促進するためのガイドラインを策定し、2022年5月に『太陽電池モジュールの適切なリユース促進ガイドライン』が公表されています。
本ガイドラインでは、リユース品として流通させる場合の条件や対処すべき内容、不適正な輸出を防止などの事項が説明されています。

経済産業省(資源エネルギー庁)による法制化の動き

資源エネルギー庁においても、太陽光発電設備の計画時における『事業計画策定ガイドライン(太陽光発電)』が公表されています。平成29年3月に初版が策定された後に改定が加えられ、現在は2024年4月に最新版が改定されています。
本ガイドラインは太陽光発電設備の企画立案から、設計・施工、運用・管理、地域との関係、そして撤去・処分に至る、設備のライフサイクル全体に関してのガイドラインとなっています。

ガイドラインの第2章第5節に、太陽光発電設備の撤去・廃棄に関して以下の内容に関して以下に定められています。

  • 再生可能エネルギー発電設備の解体等に要する費用積立て
  • 出力10kW以上の太陽光発電設備における、火災保険や地震保険等に加入努力義務
  • 出力10kW未満の太陽光発電設備における、FIT後の売電計画や適切な撤去計画(必要費用)
  • 発電設備撤去時の関係法令の遵守、廃棄物処理法に基づく処分
  • 前述の環境省ガイドラインの参照
  • 自治体や地域住民との合意事項への対応

将来において適切な撤去・廃棄が行われるか懸念(特に費用面)があることから、経済産業省において「廃棄等費用の積立制度」の議論が進み、2022年4月1日に改正の『改正再エネ特措法施行規則(電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法施行規則、平成24年経済産業省令第46号)』に基づき、廃棄費用の積立制度が開始されました。

積立てに関する業務を実施に際しては、資源エネルギー庁から『廃棄等費用積立てガイドライン』が公表されています。

外部積立てスキーム
外部積立のスキーム(引用元:資源エネ庁

なお廃棄費用の外部積立制度の関しては、別コラム(廃棄等費用積立てガイドラインの概要)でも概要を紹介しています。

太陽光発電協会(JPEA)による情報公開

一般社団法人 太陽光発電協会(JPEA)では、太陽光発電設備を撤去・廃棄する発電事業者へ向けて、以下の情報を提供しています。

廃棄物処理法に基づき太陽光パネルを処分する際に、処理業者に含有化学物質の情報提供が必要となる場合があり、パネルメーカーに対しての情報開示を推奨しています。本ガイドラインに基づき情報提供しているメーカーを確認することができます。
また太陽光パネルの適正処理が可能な産業廃棄物中間処理業者の公表もされています。

当サイトにおいても、各社WEBページや独自調査に基づき太陽光パネルのリサイクルを実施している事業者を紹介しています。

最近の動向

2022年4月に改正再エネ特措法が施行され廃棄費用の積立制度が開始(早い案件で2022年7月より積立開始)され、一定の廃棄費用が担保されることから不法投棄のインセンティブは減少していると考えられます。しかしながら太陽光発電設備の開発・運営を含めた課題は多く、特に地方との共生という面でも課題を抱えています。
こうした状況において、政府では2022年4月から『再生可能エネルギー発電設備の適正な導入及び管理のあり方に関する検討会』が開催され、現在の課題と将来への取組みが議論された後に提言案として纏められています。

引き続き『再生可能エネルギー長期電源化・地域共生ワーキンググループ』が開催されており、また廃棄・リサイクルの対応強化への具体的な方策を検討するために環境省・経済産業省合同で『再生可能エネルギー発電設備の廃棄・リサイクルのあり方に関する検討会』が開催され、中間取りまとめが纏めれました。

さらに政府による循環経済に関する方針やこれまでの取組みを背景に、2024年9月から太陽光発電設備(太陽光パネル)のリサイクル義務化に向け環境省・経済産業省合同の審議会『太陽光発電設備リサイクル制度小委員会太陽光発電設備リサイクルワーキンググループ』が開催されています関連トピック
2025年の通常国会での成立に向けた議論が進んでおり、法制化された後は太陽光パネルの廃棄・リサイクルに関して法令遵守が求められます。

自治体のガイドライン等

地方自治体でも太陽光発電の導入を積極的に推進すると合わせて、廃棄・撤去時における注意喚起や独自で条例を制定するなどの動きもあります。
発電事業者においては、それぞれの自治体での規制やガイドラインの確認・準拠が求められます。

多くの自治体では環境省が公表するガイドラインの周知が多い中、東京都では戸建て住宅への太陽光パネル設置義務化を進める中で、太陽光発電設備の取外しや収集運搬に関する独自のガイドラインを公表しています。

東京都のガイドラインでは実際の作業に関する流れや注意事項など詳細が説明や動画解説なども公開されており、住宅用太陽光パネルの撤去解体や収集運搬で広く活用できる内容となっています。

まとめ

太陽光発電設備の撤去・廃棄に関する問題意識はFIT後の早い段階で指摘されていたものの、実際のガイドラインの周知の不十分や廃棄費用の積立が行われていない現状など、多くの課題も浮き彫りになっていました。
中間処理を行う事業者による技術開発やリサイクルシステムの構築が望まれる一方で、今後は発電事業者側も排出者責任が厳しくなると考えられます。

太陽光発電に関する制度が大きく変わる中、持続可能なシステム実現のためにはライフサイクル全体での経済性や環境負荷も考慮し、太陽光発電に関わる全ての事業者が法令遵守やガイドラインを準拠することは勿論、環境や地域社会との調和が求められます。

参考資料