環境省では、金属リサイクルにおいて脱炭素型リサイクルシステムの有効性を検証のため「令和3年度脱炭素型金属リサイクルシステムの早期社会実装化に向けた実証事業」を実施し、太陽光パネルに関する事業も2件の報告書が公開されています。
- 太陽光パネルの高度選別技術開発とリサイクル・システム構築による早期事業化(株式会社新菱)
- 太陽光パネルの収集・リユースおよび非鉄金属の回収に係る技術実証(イー・アンド・イー ソリューションズ株式会社)
本事業で検証した内容に関する報告書を2回に分け、今回は『1.太陽光パネルの高度選別技術開発とリサイクル・システム構築による早期事業化』について紹介します。
本事業で検証した内容に関する報告書を2回に分け、前回(関連ニュース)に引き続きは『2.太陽光パネルの収集・リユースおよび非鉄金属の回収に係る技術実証』について紹介します。
実証事業の概要
本事業では、将来の大量廃棄を見据え太陽光パネル中の銅・銀が最終処分されることなく金属リサイクルが促進される社会実現に必要な検証等がされています。
- 太陽光パネル中に含まれる銅・銀の濃縮処理に係る検証
- 住宅用太陽光パネルの収集ルート導入に向けた回収実証実験
- 太陽光パネルの金属リサイクルに伴う CO2 排出量の削減効果の評価
- 出口戦略の検討
・報告書 >> 令和3年度脱炭素型金属リサイクルシステムの早期社会実装化に向けた実証事業(太陽光パネルの収集・リユースおよび非鉄金属の回収に係る技術実証)委託業務 成果報告書
実証事業の結果
前年度から継続された本実証事業により、下記結果が得られたと報告されています。
太陽光パネル中に含まれる銅・銀の濃縮処理に係る検証
- セル/EVAシート中の有用金属および管理が必要な有害物質の含有率を評価し、物理選別により非鉄製錬の原料を製造でき得ることを確認
- セル/EVAシートの濃縮処理の単価は、破砕・熱処理後の残渣を管理型最終処分場での処理単価と比べて、大きな相違が生じない
- 鉛のトレーサビリティー確保のため、セル/EVAシートの金属濃縮推奨を指摘
太陽光パネルの収集ルート導入に向けた回収実証実験
- 住宅用太陽光パネルの回収実証実験として、埼玉県内に4ヶ所の回収拠点を設け2021年7月から12月の期間で実施し、計5か所の撤去現場から計154枚を回収
- 使用済太陽光パネルの排出量が少ない現時点では、マニフェスト運用の制約から回収拠点での保管日数が制限されるため、回収拠点の設置が効率的な運搬に寄与しない
- 住宅用太陽光パネルの適正処理の課題を共有のため、自治体間のラウンドテーブル設置や中央官庁も関与した課題解決への取り組み方針の必要性を指摘
太陽光パネルの金属リサイクルに伴うCO2排出量の削減効果の評価
- 太陽光パネル中の銅と銀の循環利用促進によりCO2排出量削減効果は『0.073t-CO2/t-太陽光パネル』と評価、海外での天然資源採掘の代替効果による削減効果が高い
- 回収拠点を設置し運搬効率の向上が行われる場合、輸送に係るCO2排出量は半減
出口戦略の検討
- 任意団体のであるPVCYCLEJAPAN認定業者によるリサイクルシステムとトレーサビリティー確保を検証
- PVCJ認定は法規制によらない自主的取り組みであることから、自治体や金融セクターとの協調など後押しする仕組みが重要と指摘
まとめ
本実証事業での結果より、使用済太陽光パネルに含まれる銀・銅などの有用金属を適正に回収することで、CO2削減効果や環境への影響抑制につながることが明らかになることが報告されています。
回収・処理として任意団体PVCJによるスキームが紹介されており、一部中間処理業者が認定され回収事業が既に行われています(関連ニュース)。
一方で効率的な回収方法や自治体等との協調なども指摘されており、関連機関や処理業者などを中心として地域としての取組みが求められます。
参考資料