(公開日:2022-05-04)
以前のコラムでは、発電方式ごとの必要となる消費資源の特徴や環境への影響を見てきました。再生可能エネルギーは化石燃料や原子力などに比べエネルギー密度が小さいことから、同じ電力を得るのに規模を大きくする必要があります。環境への影響は比較的小さいものの多資源消費となるため、廃棄物・資源の循環が必要だと考えられます。
引き続き今回のトピックでは、太陽光発電を中心とした再生可能エネルギーや各種発電方式でのCO2排出量とエネルギーペイバックに関して紹介していきます。
<データ・資料に関しての注記>
以下で紹介するデータ・図表等は各発行元の資料によるものであり、それぞれ異なる結果となっています。
それぞれの前提条件や数値の整合性は確認しておらず、全体的な傾向の把握を目的として掲載います。
またあらゆる地域や個別の事例について、以下で紹介するデータ等が該当するものではありません。
発電時にCO2を排出しないといわれる再生可能エネルギーですが、製造時などに要するエネルギーなどライフサイクルを通じてのCO2排出量を別途考える必要があります。
発電方式の違いによるライフサイクルCO2排出量の比較は色々なデータが公表されています。
算出条件の違いにより排出量の推定値に若干の違いはあるものの、概ね再生可能エネルギーによる発電はライフサイクルを通してもCO2排出は小さいと考えられています。
一方で化石燃料による発電は燃料由来のCO2排出量が大きく、CCS(Carbon Capture and Storage、二酸化炭素回収・貯留)を併用しない限り、CO2排出量を抑えるのは難しいと考えられています。
なおEUでは、一部の天然ガスや原子力による発電を移行措置として認める『EUタクソノミー』が議論されています。
しかし本規則に基づく化石燃料由来の発電においては、ライフサイクルでの温室効果ガス(GHG)の排出量を『100g-CO2e/kWh以下』に抑える必要があり、非常に厳しい条件が課されていることが分かります。
エネルギーペイバックタイム(EPT、Energy Payback Time)は、エネルギー源の性能の表す指標のひとつです。
ライフサイクル中に投入されるのと同じだけのエネルギーを、発電によって節減できるまでに必要な稼働期間を表し、これが短いほど優れていることを示します(詳しい定義はこちらから)。
太陽光発電の場合、ライフサイクル中の投入エネルギーはその殆どが設備の生産に要したエネルギーとなり、これにメンテナンスや廃棄時のエネルギーが加わります。
同様に、温室効果ガス排出量で見て元が取れるまでの期間をCO2ペイバックタイムと呼ばれ、この数値が小さいほど温暖化抑制効果が高いことになります。
NEDOによる報告書によれば、太陽光発電によるエネルギーペイバックタイムは『2~3年』程度となっています。
本資料が2009年時点の数値であり、現在は太陽電池モジュールの性能向上などから、さらに少ない年数となっていると考えられます。
直近の資料によれば、屋根置きの太陽光発電設備でエネルギーペイバックタイムは、2年を下回る数値になっています。
また既存の発電方式や他再生可能エネルギーとの比較を参考に紹介します。
(2008年時点の資料のため、最新のデータではないことに注意が必要)
前項までで、太陽光発電(再生可能エネルギーによる発電)が多くの資源を必要とするものの、ライフサイクルを通してのCO2排出量が比較として小さいことを見てきました。
発電所から廃棄・撤去される廃棄物は、資源としてリサイクルする必要性は論をまたないだけでなく、CO2排出量の削減といった点でも有益だと考えられます。
資源の有効活用に留まらず、資源の安定供給やコスト削減、CO2削減など、リサイクル技術と回収スキームの重要性が明らかだと考えられます。
発電時に二酸化炭素の排出がない太陽光発電(再生可能エネルギー)は、ライフサイクルを通してのCO2排出量の点からも、化石燃料由来の発電方式に比べて少ないと考えれています。
製造時のエネルギー消費やCO2排出を考慮した場合においても、数年以内に回収できると考えられており、温室効果ガスを削減できる効果が期待できることから気候変動への有効な手段と考えられます。
一方では資源や土地などの環境への影響は大きいこともあり、持続可能な太陽光発電システムの構築にはリサイクルの重要性が、今後さらに求められると考えられます。