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NEDO:2022年度「太陽光発電主力電源化推進技術開発」中間評価の概要

(公開日:2022-10-29)

NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)では、『太陽光発電主力電源化推進技術開発』が2020~2024年度の5年間で実施されており、2022年10月21日に研究評価委員会分科会としてプロジェクトの中間評価が実施されました。
太陽光パネルリサイクルに関わる研究開発もあり、『太陽電池モジュールの分離・マテリアルリサイクル技術開発』、『リサイクル関連の動向調査』が報告されています。

プロジェクト詳細に関する内容は非公開でしたが、オンラインで一部公開されていた委員会の内容と公開されている資料にて、それぞれの開発項目の概要を紹介していきます。

プロジェクトの背景と目的

2012年以降のFIT制度により太陽光発電導入量は急増したことで、普及後の社会を支える戦略が必要となっており、導入拡大に伴う安全性や廃棄物等の懸念も指摘されています。
2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、長期安定的な主力電源として再生可能エネルギーが位置付けられており、太陽光発電の更なる導入が必要となる一方で大量導入に向けた課題に取り組む必要性も指摘されています。

(引用元:NEDO

NEDOでは大量導入社会に向けた現状分析、課題抽出、課題解決の方策を検討し、今後の技術開発の指針として『太陽光発電開発戦略2020(NEDO PV Challenges 2020)』が策定され、開発戦略を実現するために5年間でプロジェクトが遂行されています。
また本プロジェクトは、過去2014年から実施されてきた技術開発の後継且つ包括的な事業として位置づけられている様です。

(引用元:NEDO

太陽光パネルのリサイクルに関しては、リサイクル技術に関して2件、動向調査1件が実施されています。

  • 太陽電池モジュールの低温熱分解法によるリサイクル技術開発
  • 結晶シリコン及びCIS太陽電池モジュールの低環境負荷マテリアルリサイクル技術実証
  • リサイクル関連の動向調査

またこれらの技術開発は、2019年度に実施された『太陽光発電システム長期安定電源化基盤技術開発プロジェクト』を継続実施されたものとなっている様です。(関連トピック

太陽電池モジュールの分離・マテリアルリサイクル技術開発

『太陽電池モジュールの分離・マテリアルリサイクル技術開発』として、2件実施されています。

  • 太陽電池モジュールの低温熱分解法によるリサイクル技術開発(トクヤマ)
  • 結晶シリコン及びCIS太陽電池モジュールの低環境負荷マテリアルリサイクル技術実証(ソーラーフロンティア)
(引用元:NEDO

NEDOではリサイクル技術開発により分離処理コスト低減で成果を上げているとされていますが、太陽光発電設備のシステム価格低減が進む中、更なる低コスト化が必要と指摘されています。
将来の大量廃棄を見据え、最終処分量(埋立処分)を最小限に抑える必要から、太陽電池モジュールの分離物を水平リサイクルも見据えた有効活用するマテリアルリサイクル技術の開発が重要とあります。

研究開発では、実モジュールサイズの実証プラントを構築し、以下の性能を実健することが目標とされています。

  • 分離処理コスト3円/W以下の分離技術
  • 資源回収率80%以上の分離技術
  • 太陽電池モジュール由来の回収物がマテリアルリサイクルに資する
(引用元:NEDO

太陽電池モジュールの低温熱分解法によるリサイクル技術開発

2019年に実施された技術開発の成果をベースとし、リサイクルプロセス全体を実証プラントでの検証をはじめとして、以下の項目が検討されています。

  1. 分離技術の開発と最適化された触媒システムの開発
  2. リサイクル全体工程の開発
  3. 省エネルギープロセスの開発
  4. マテリアルリサイクルの開発
  5. 実証プラントを構築し、連続運転で分離・マテリアルリサイクル技術の実証
(引用元:NEDO

今回の実証試験にて、処理速度12枚/hr(1.5時間運転)の処理条件で、処理コストは3.76円/W(108,000 枚/年処理時)になると報告されています。

(引用元:NEDO

実用化・事業化の計画として、北海道での産業廃棄物の中間処理業許可取得に向けた協議を進めており、2024年度に中間処理業の許可申請、2025年度に事業化開始を予定しているとあります。
焼却に変わる低温熱分解処理技術としてCO2削減技術として他分野への応用や、海外を含めた事業展開を計画していると報告されています。

結晶シリコン及びCIS太陽電池モジュールの低環境負荷マテリアルリサイクル技術実証

2019年技術開発ではCIS太陽電池モジュールのパネル分解技術が実施されており、今回の技術開発では実証プラントでの評価が行わられています。
またシリコン系太陽電池モジュールも対象とされており、分離前後の工程であるフレーム分解技術やカバーガラスの用途開拓などが実施されています。

  1. 結晶シリコン及びCIS太陽電池モジュールの分離処理技術確立
  2. 結晶シリコン太陽電池モジュールを構成する全マテリアルの効率的回収及び清浄化技術
  3. 結晶シリコン及びCIS太陽電池モジュールを構成する全マテリアルのリサイクル用途開発
  4. カバーガラスの水平リサイクル及びリユースに対する用途開拓とその実現のための品質評価技術の開発
  5. 汎用性のあるフレーム分解技術開発
  6. 実証プラントにおける技術実証運転
(引用元:NEDO

今回の実証プラントでは7千枚弱の処理が実施されています。

(引用元:NEDO

本技術開発では、Si系・CIS系のモジュールに対応したパネル分解コストとマテリアルリサイクル率を両立する分解・選別方式を開発し、モジュール重量構成比90%以上のマテリアルリサイクル率見込みを達成したと報告されています。
またPVマテリアルを応用したコンクリート2次製品開発において新たな知見が得られており、学会で発表されたともあります。

2023年に5MW/年規模のリサイクル処理設備の導入を検討中であり、2030年代には数百MW規模の投資を検討しているとあります。
本プロジェクトの成果は、高いマテリアルリサイクル率と経済合理性の両立、処理時のCO2排出抑制できる可能性があると報告されており、技術の汎用展開により設備コストの抑制を目指すとあります。

リサイクル関連の動向調査

急激に変化する太陽光発電において、発電コスト低減と国際競争力を確保するため、国内外の動向を把握し、プロジェクトに反映していく必要があります。
リサイクル関連の動向においても、国内外の技術開発・政策動向、普及や実施事例などの調査に加え、リサイクルされるガラスの出口や排出量予測の精緻化により、太陽電池モジュールの適正処理のシステム構築に貢献が目標とされています。

リサイクル関連の動向調査として、2つの調査が行われています。

  • 太陽電池モジュールのリサイクルに関わる調査(三菱総合研究所)
  • 太陽電池モジュールの適正処理に関わる調査(みずほリサーチ&テクノロジーズ、JPEA)
(引用元:NEDO
太陽電池モジュールのリサイクルに関わる調査

本テーマでは、以下の調査が実施されています。

  1. 太陽電池モジュールのガラスの再利用の状況調査
  2. 太陽電池モジュールのリサイクルに関わる国内の技術開発動向、政策動向、実施事例等の調査
  3. 太陽電池モジュールの災害時のリサイクル状況調査
  4. 使用済太陽光発電設備の排出量予測の精緻化

①ガラスの再利用については、グラスウール製造での太陽電池モジュール由来ガラスの受入条件・ポテンシャルを確認し、受入基準が作成されています。
②リサイクルに関わる各種動向調査では、文献調査、ヒアリング調査により技術開発動向、政策動向、リサイクル実施事例、中間処理業者などの情報がまとめられています。

※最新動向については、当WEBサイトでご覧いただけます。

その他、④災害時のリサイクル状況調査として関係者へのヒアリングや被害城東の整理、④排出量予測の精緻化などが纏められています。

太陽電池モジュールの適正処理に関わる調査

本テーマでは、以下の調査が実施されています。

  1. 国内における太陽電池モジュールの適正処理に関する調査
  2. 海外における太陽電池モジュールの適正処理に関する調査
  3. 太陽電池モジュール適正処理の円滑化に向けた検討

①国内での適正処理に関する調査では、関連する事業者(発電事業者、撤去・解体事業者、収集運搬業者、中間処理業者)へのヒアリングが行われており、解決すべき課題や制約要因が纏められています。
当然ながら処理費用という課題は存在するものの、排出者側での処理依頼のタイミングや保管コスト、処理受託側での安定的な受入れニーズなど、廃棄量が少ない現状での課題となっています。
適正処理の円滑化を図るためには、処理能力や費用等に関する情報提供、収集運搬効率化に向けたスキーム構築や手続きの簡素化、リサイクルに向けた支援策などが有効だと指摘されています。

②海外での適正処理に関する調査では、主要各国の太陽光パネルのリサイクルの取組みが記載されています。(関連トピック

③太陽電池モジュール適正処理の円滑化に向けた検討では、特に住宅用や小規模の発電所から少量の太陽電池モジュールを撤去する場合においての撤去・収集運搬パターンなどをモデル化し、輸送コストの比較検討がされています。
効率化に寄与する条件や課題が整理されており、回収システムや法規上の課題なども整理されています。

まとめ

NEDOによる本プロジェクトは、過去実施されてきた太陽光発電の技術開発を主力電源化に向けて更に推進するものとなります。
太陽光パネルのリサイクルに関しても、カーボンニュートラルや資源循環の実現に欠かすことのできないものであり、技術開発・調査研究が進められています。

より良いリサイクルシステムの構築のため、引き続き最新の技術開発動向を実際の企業の取組みと合せて注目していく必要があります。

参考資料