経済産業省は、2022年11月25日に『第4回 再生可能エネルギー長期電源化・地域共生ワーキンググループ』を開催しました。
再生可能エネルギー長期電源化・地域共生ワーキンググループでは、地域と長期に共生する再エネ導入を加速するために、事業規律の強化に向けた制度的措置の具体化と、既設再エネの最大限の活用策について検討が行われています。
第1回では論点整理(関連トピック)、第2回には関連事業者等からのヒアリングがそれぞれ実施されており、第3回では再エネ設備(太陽光発電)の土地開発前段階の課題および地域とのコミュニケーションや認定事業者の責任などについて議論されました。
第4回では、再エネ設備における土地開発後から廃棄までにおける検討項目と関係法令遵守に関しての議論がされています。
本WGでの議論の中心課題ともいえる発電事業者の事業規律強化として、今回再エネ特措法における認定事業者に対しての違反の未然防止・早期解消を促す仕組みが議論されています。
① 事業計画に違反した場合、FIT/FIP交付金を留保するための積立義務を課す。また、違反状態の早期解消インセンティブを持たせるため、違反の解消又は適正な廃棄等が確認された場合は、留保された交付金を取り戻せることとする。
② 著しい違反行為については、認定取消しに加えて、違反時点から、認定が取り消された時点までのFIT/FIP交付金の返還を求める。
引用元:経産省
FITによる売電事業は、広く国民に電気代として負担することからも、WG各委員も概ね賛意が示されており、行政法の観点からも法制化に支障はないとの見解が述べられています。
本制度は直接に太陽光パネルの廃棄・リサイクルに関係する議題ではありませんが、FIT制度による発電事業における違反状態の改善を促す仕組みとして、制度化が進むものと思われます。
なお違反状態の場合には、FITの特定契約に基づき事業者に支払われる売電金額から積立金(FITで得られる利益)を別途積立てておき、違反状態が解消した時点で取戻しを行うスキームが検討されています。
既存の再エネ設備の有効活用として太陽光発電設備のパネル更新/増設の際のFIT価格等の考え方が議論されています。
FIT期間中に出力増強を行った場合は、外部積立てが可能の期間が限られるため積増しが難しく、どの様に適正廃棄(費用)を担保するかが課題となります。
議論の中では、十分な費用を確保できることを前提とした上で増強を認めることや、設置後の運用を踏まえた積立方法を引き続き検討するなどの意見が上がっています。
非FIT・非FIP案件の対応や、所在不明事業者に対する規律の徹底などが議論されています。
2030年代後半に太陽光パネルの大量廃棄への計画的対応や、適切な廃棄物処理のため有害物質など廃棄物の性状の情報提供を徹底し、排出事業者・処理業者への共有方法などが議論されています。
太陽光パネルの含有物質等の情報提供における背景や課題が上げられています。
『太陽光パネルの含有物質等の情報提供のあり方』として、以下の案が示されています。
『リサイクル・適正処理に関する対応の強化に向けた検討』に関しては、以下の論点が示されています。
事務局が提示した制度案や論点に対して、WG各委員からは以下のコメントが出されています。
(廃棄・リサイクルに関しての指摘事項のみ)
今回のWGでは、違反状態における交付金の留保や大量廃棄に向けた計画的対応などが議論されています。
地域社会や環境と調和した再エネの持続的発展・普及のためにも発電事業者の規律強化の取組みが必要であり、今後も制度化に向けて具体的な議論が進むと思われます。
ライフサイクルという観点においても、太陽光パネルの廃棄・リサイクルの適正な仕組み作りが求められています。
発電事業者に限らず、リサイクル事業者や地域社会にも大きな影響があるため、今後の議論の進捗が注目されます。