経済産業省は、2023年2月10日に『第5回 再生可能エネルギー長期電源化・地域共生ワーキンググループ』での議論を踏まえ、『中間とりまとめ』を公表しています(関連トピック)。
2012年のFIT制度の開始以降、発電までのリードタイムが比較的短い太陽光発電を中心に導入が進み、再生可能エネルギーが発電に占める割合は2011年度の約10%から2021年度には約20%にまで倍増しました。
一方で、多様な事業者等の新規参入する中で、安全面・防災面、景観や環境への影響、将来の廃棄等に対する地域の懸念が高まっています。
こうした懸念の解消に向けて2022年4月に『再生可能エネルギー発電設備の適正な導入及び管理のあり方に関する検討会』が開催され、今後の制度的対応や運用のあり方などが提言として取りまとめられています。
また、『再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会』において、事業規律の強化を前提に再エネ設備の最大限の活用を促すため、既存再エネの長期電源化と有効活用に向けた論点も整理されています。
これらの議論を踏まえ、『再生可能エネルギー長期電源化・地域共生ワーキンググループ(WG)』では地域と長期に共生する再エネ導入を加速するために、事業規律の強化に向けた制度的措置と既設再エネの最大限の活用策について議論が行われ、『中間とりまとめ』として具体的に整理されています。
これまでに5回のWGが開催されており、パブリックコメントを経た上で『中間とりまとめ』として整理されています。
(パブコメによる追記・修正はほぼ無し)
再エネ設備における土地開発後から廃棄までにおける各段階と横断的事項に関して整理されています。
使用済太陽光パネルの適正廃棄に関わる事項も、『出力更新・増強時の廃棄等費用の取扱い』や『大量廃棄に向けた計画的対応』として整理されています。
太陽光パネルが廃棄されるピークが2030年代に想定されており、計画的な対応や太陽光パネルの含有物質等の情報を正確に把握するためのデータベース構築、リサイクルの制度的支援や義務的リサイクル制度の活用など、引き続き検討すべきと指摘されています。
なお上記事項の概要は、過去に開催されたWGの議論として紹介しています。
今後は『中間とりまとめ』で示された方向性に基づき、関係省庁と連携しながら実効性確保や関係者の権利保護の観点も考慮し詳細な検討を行うとともに、地域・環境と長期に共生する再エネ導入に向けて必要な制度的対応を速やかに講じらることが期待されます。
FIT制度の始まった2012年以降に急速に普及が進んだ太陽光発電ですが、一方では多様な事業者の新規参入もあり、地域との軋轢や懸念(安全面・防災面、景観や環境への影響、将来の廃棄等)も高まっています。
東京都や川崎市で戸建て住宅への太陽光発電設置義務に代表されるように、地方や自治体でも再エネ普及に向けた動きが活発になっており、再エネの普及には地域社会・市民の理解が求められます。
循環経済・リサイクル資源の有効活用という観点からも、太陽光パネルの適正廃棄・リサイクルを促進するための制度的対応が求められ、今回で取りまとめられた方向性での制度化が進める必要があります。
今回公表された『中間とりまとめ』は、発電事業者だけでなく、再エネ設備の施工業者や静脈産業に業者など多くの事業者に関わる内容であり、広く情報が周知されることが望まれます。