環境省と経済産業省は『再生エネルギー発電設備の廃棄・リサイクルのあり方に関する検討会』の第3回を、2023年6月19日に開催しました。
第3回検討会でも、引き続き実際に太陽光パネルの廃棄・リサイクルに関わる業界団体や事業者へのヒアリングが行われ、現在の取組みと課題についての議論がされています。
(前回までの検討会に関してはこちらから ⇒ 第1回、第2回)
2050年に向けてのカーボンニュートラル化やエネルギー安全保障、輸入に頼る資源の問題などから、再生可能エネルギーの重要性の高まりに伴い、再生可能エネルギーの持続的な導入には地域との共生が不可欠となっています。
一方で2012年に開始したFIT制度による太陽光発電の急速な普及により、地域との葛藤や将来の廃棄など、多くの課題も浮き彫りになっています。
これまで経済産業省・環境省では廃棄・リサイクルの課題について検討会(関連トピック)やワーキンググループ(関連トピック)が開催されています。
本検討会ではこれまでの議論の内容を踏まえ、太陽光パネルの大量廃棄に対する対策としてリサイクル技術、資源循環、法制度の専門家などの議論や業界団体や自治体などからのヒアリングを通じて、具体的なリサイクル促進策をまとめる予定となっています。
今回の検討会では、業界団体からは使用済みパネルのリユース・リサイクル促進に取組む太陽光リユース・リサイクル協会、産業廃棄物の適正処理を推進する全国産業資源循環連合会、事業者として伊藤忠商事株式会社とAGC株式会社の計4者から、太陽光パネルの廃棄・リサイクルの実状や取組み、課題などが報告されています。
太陽光リユース・リサイクル協会はリユース・リサイクル業者を含む様々なステークホルダーで構成されており、使用済みパネルのリユース・リサイクル促進に向けた様々な啓発や課題解決に向けた幅広い活動を展開しています。
リユースでの課題として、検査記録の不備やリユース基準がないことによる品質のばらつきや、リユースそのものを検討せずに産廃処分するケースがあるとされています。
リユース買取費用とリサイクル費用(処理委託費用)の金額相殺で廃掃法上の違法な受け渡しや、売却先情報の未確認、不良品の海外輸出などの不適正輸出の可能性もあると懸念されています。
またリユース品を扱う際の廃掃法の自治体解釈・運用の違いや、リユース品普及に向けた制度が無いなど、行政面での不備も指摘されています。
リサイクルに関しても、リサイクルでなく埋立処分されるといった処理コストを優先する排出事業者があるとされており、少量発生の廃棄パネルでは回収コスト。
廃棄パネルは災害起因などが多いことやリサイクル事業者の周知不足などによりリサイクル需給が安定しないことや、処理後の再資源化(特にガラス)やリサイクルの経済性(金属相場変動などの影響)の課題もあります。
処理方式によっては行政の設置許可取得が難しいケース、リサイクル率が設定されていない等、国・自治体それぞれでの行政面の課題も指摘されています。
適正なリユース・リサイクルに向けて、課題や提案が説明されています。
全国産業資源循環連合会(全産連)は全国の産業廃棄物処理業者で組織する団体から構成されており、産業廃棄物の適正処理の推進のために多様な事業活動を行っています。
全産連からは、産業廃棄物の最終処分に関する事項と太陽光発電設備の廃棄に現状に関しての説明がされています。
日本を代表する総合商社の伊藤忠商事株式会社は再生化のエネルギービジネスにも力を入れており、国内約350MWの再エネ発電設備の保有や、近年では分散型太陽光発電事業(PPA)などを推進しています。
今回の検討会では、2022年に資本業務提携したROSI社(仏)の太陽光パネルの高度リサイクル技術をの紹介や、フランスにおける太陽光パネルのリサイクルの情勢が報告されています。
世界トップクラスのガラスメーカーであるAGC株式会社は、太陽光パネル用ガラスを生産していないもの、最終埋立処分の減容化、資源循環やCO2削減の観点から、太陽光パネルの廃ガラス由来のガラスカレットのリサイクルに注目しています。
リサイクルガラスカレットを板ガラスの原料として使用する場合、リサイクル材料の品質(異物管理)やガラス組成コントロール、環境面の適合性確認が求められます。これらに加え、太陽光パネル由来のガラスカレットでは板ガラス製造方法に起因する影響も考慮に入れる必要があると説明されています。
今回の検討会では、実際の太陽光パネルのリサイクル・リユースに取り組む事業者からのヒアリングが行われ、さらにフランスでのPVリサイクルの実例が紹介されるなど、これまでの検討会に比べて詳細な議論が行われた印象を受けました。
リユース・中古パネルの市場動向や取引き、法律違反が懸念されるケースの実態、そして太陽光パネルのリサイクルガラスの再資源化における技術的な困難さなど、実際にリサイクルに取り組む事業者が直面している課題が認識されました。
太陽光パネルの処分におけるWDS(廃棄物データシート)の運用や、既に議論されている太陽光パネルの含有物質情報や溶出試験の方法、処分場の逼迫状況や現在の中間処理における事業上の課題、そして適正なリサイクル市場の促進のための補助金やリサイクルチェーンのあり方など、数多くの有意義な議論が進められました。
次回の検討会でも順次ヒアリングが予定されており、論点の整理が進められるとのことです。
今回の検討会では太陽光パネルのリサイクルに実際に携わる事業者・団体へのヒアリングが行われ、これまであまり注目されてこなかったガラスリサイクルの重要性やリサイクル・リユースの実態など、太陽光パネルリサイクルのボトルネックに焦点が当てられました。
リサイクルシステム構築には市場の動向や課題を精緻に把握することもさることながら、付加価値の高いリサイクルチェーンを形作る為に官民を挙げた取組みが求められることが、多くの委員や事業者からも問題提起として挙げられています。
今後の検討会では、リサイクルの実態や課題に対する論点や提言に対し、どのような方向性を示すべきかについての議論が進むことが期待されます。