環境省と経済産業省は『再生エネルギー発電設備の廃棄・リサイクルのあり方に関する検討会』の第4回を2023年7月18日に開催しました。
第4回検討会でも引き続き実際に太陽光パネルの廃棄・リサイクルに関わる業界団体や事業者に加え、風力発電設備に関するヒアリングも行われ、現在の取組みと課題についての議論がされています。
(前回までの検討会に関してはこちらから ⇒ 第1回、第2回、第3回)
2050年に向けてのカーボンニュートラル化やエネルギー安全保障、輸入に頼る資源の問題などから、再生可能エネルギーの重要性の高まりに伴い、再生可能エネルギーの持続的な導入には地域との共生が不可欠となっています。
一方で2012年に開始したFIT制度による太陽光発電の急速な普及により、地域との葛藤や将来の廃棄など、多くの課題も浮き彫りになっています。
これまで経済産業省・環境省では廃棄・リサイクルの課題について検討会(関連トピック)やワーキンググループ(関連トピック)が開催されています。
本検討会ではこれまでの議論の内容を踏まえ、太陽光パネルの大量廃棄に対する対策としてリサイクル技術、資源循環、法制度の専門家などの議論や業界団体や自治体などからのヒアリングを通じて、具体的なリサイクル促進策をまとめる予定となっています。
今回の検討会では、再生可能エネルギーの業界団体として再生可能エネルギー長期安定電源推進協会(REASP)や太陽光パネルメーカーのLONGi Solar Technology株式会社から、太陽光パネルの廃棄・リサイクルの実状や取組み、課題などが報告されています。
また今回の検討会では、風力発電設備の廃棄・リサイクルに関してのヒアリングも、計3団体・事業者から行われています。
再生可能エネルギー長期安定電源推進協会(REASP)は、再生可能エネルギー発電の長期安定的電源としての普及促進、 エネルギー安全保障の強化と国民生活水準の向上に寄与するため、発電事業者を始めとする100を超える事業者団体として、再エネ普及に向けた各種の検討・提言を行っています。
REASPは会員を対象としたアンケート調査による実態調査を実施しており、今回のヒアリングでは発電事業者の立場から実状や課題、要望などが説明されています。
発電事業者の多くはFIT終了後においても運転継続の意向を持っており、将来の排出として「賃貸借契約の期限」と「経済耐用年数による更新・撤去」などの、二つのピークが想定されると説明しています。
FIT後の運転継続には、①売電先確保、②賃貸借契約の延長、③機器の故障・劣化などの要因に左右され、将来の電力市場での採算確保や出力制限抑制のための蓄電設備や系統増強などが必要だと説明されています。
また議論の中では、環境価値の制度化や土地継続利用(土地取得)への制度的対応なども検討すべきという意見もあります。
アンケートの結果から、リユースや売却の活用への意識は低く、また廃棄処理時のリサイクル要求も低い水準であることが明らかになっています。
また継続利用が可能なパネルの判断が難しい実状が説明されており、リユースガイドライン(環境省)の記載内容の充実が必要だと指摘されています。
リユースパネルの活用は、型式変更が不要なことからパネル交換時の施工面や手続きの簡素化を図ることができ、さらに納期短縮や廃棄物処理費用を含むコスト削減が期待されています。
一方で国内のリユース市場が十分に機能しておらず、流通量の確保や保管コスト、品質要求やパネルの保証などが課題とされています。
REASPではリユース市場の活性化のために、発電事業者がリユースパネルの共同在庫を保管する案や、新設案件で利用促進を図る制度化などが提案されています。
これまでの検討会でも議論されているように、型式別の含有物質情報データベース化がリサイクル促進に必要だと説明されています。
またリサイクルコスト(処理委託費用)の低減も必要であり、拙速なリサイクル義務化は放置案件増加にもつながる懸念も挙げられています。
放置案件は小規模案件が主立っており、再エネ発電設備は優良事業者に集約することで、放置対策が進むと説明されています。
しかし大手事業者を中心としたセカンダリー市場では中規模以上(500kW以上)が主体であり、デューデリジェンスやエリア集約など維持管理の合理化への支援策や、不動産競売に準じる手続きの導入などの必要性を指摘しています。
LONGiはシリコン系太陽光パネルのインゴット(セルの原料)からウェハ、セル・モジュールの製造を手掛けており、太陽電池モジュールとして46GW超(ウェハで85GW)の出荷実績を持つ世界有数の太陽電池モジュールメーカーです。
日本法人のLONGi Solar Technology(株)からは、モジュールメーカーとしてのリサイクル関連の情報提供の取組みが説明されています。
その他、リサイクルには直接関係ないものの、ウェハサイズの業界標準化や長期使用可能な製品開発の取組みが紹介されています。
本検討会では再生可能エネルギー全般の廃棄・リサイクルを対象として議論が進められており、今回のヒアリングでは風力発電に関わる業界団体や事業者へのヒアリングも行われています。
太陽光発電と風力発電では事業形態や設置における地域性などに違いがあるものの、FIT後の発電継続への課題やブレードのリサイクル方法など、太陽光発電事業と類似の課題も指摘されています。
太陽光パネルとは直接関係ないため割愛しますが、太陽光発電だけでなく風力発電にも関わる再エネ発電事業者も少なくないことから、太陽光パネル同様に動向に関心を向ける必要があります。
今回のヒアリングでは、太陽光発電事業者に関わる団体のヒアリングだったこともあり、太陽光パネルに関してはリユースに関しての指摘や質問が多く上がりました。
太陽光パネルの適正な廃棄・リサイクルが議論される中で、本来のライフサイクルの観点からはFIT終了後においても発電事業の継続やリユースパネルの活用を進めることが、廃棄物を抑制するための基本となります。
今回の検討会では再エネ発電事業者団体のヒアリングが実施され、発電事業者としては長期運転継続の意向があるものの、将来的な電力市場や不確実性や事業継続へのインセンティブへの対応が必要だと指摘されています。
発電事業の運転継続の状況によって、これまでの廃棄量推計(環境省やNEDO)も大きく変動する可能性が示唆されており、リサイクルに取組む中間処理事業者への影響も大きいと考えられます。
今後の検討会では、これまでの課題に対する論点や提言を整理するのに加え、リサイクル事業を進めるために必要な市場や発電事業者の実態など、さらに踏み込んだ議論が期待されます。