太陽光パネルリサイクルの情報を掲載しております。

インドにおける太陽光パネルリサイクル情勢

(公開日:2023-09-07)

インドでも再生可能エネルギーとして太陽光発電の導入が進む一方で、適切な廃棄・リサイクルの制度・システムは今後の課題となっています。
今回のコラムでは、インドの太陽光発電の廃棄・リサイクルの全体像を、公表されているレポートなどを基に紹介していきます。

なお今回のコラム作成に当たっては、下記で紹介するCEEW(※)のレポート『How India can Manage Solar Photovoltaic Module Waste Better』の著者から最新情勢や動向に関する情報のアドバイスを頂きました。

※CEEW: Council on Energy, Environment and Water、インドで政策提言を行う非営利シンクタンク

インドにおける太陽光発電の導入状況の概観

IEA(国際エネルギー)などの資料によれば、インドでは2022年には約18.1GWの太陽光発電が導入されており、世界で3番目に大きい市場となっています。
その中で産業用は約15.7GW(87%)、住宅(屋根上)は2.4GWとなっています。

累計導入量でも79.1GWと日本の84.9GWに迫る勢いであり、現在の導入ペースであれば早晩日本を抜いて世界3位の導入量となると考えられます。

(引用元:IEA PVPS – Snapshot Reports 2023 edition
(引用元:REN21 – RENEWABLES 2023 GLOBAL STATUS REPORT

2030年までに再生可能エネルギーの目標500GWのうち、292GW以上が太陽光発電と見込まれており、大量の廃棄物と増加する排出をもたらす可能性があるとされています。

インドのシンクタンクであるCSTEP(The Center for Study of Science, Technology and Policy)によれば、インドでは2050年までに約450万トンの太陽光パネルが廃棄されると予測されているものの、そのうち20%しか回収されないとも指摘されています。

インドにおける太陽光パネルリサイクル情勢 ~ CEEWのレポートから

インドで政策提言を行う非営利のシンクタンクCEEW(Council on Energy, Environment and Water)は、太陽光パネルのリサイクルに関するレポート『How India can Manage Solar Photovoltaic Module Waste Better』を公開しています。
本レポートでは太陽光パネルのリサイクル技術、インドにおける現状や課題、主要国の動向などが纏められており、インドでのリサイクルシステム構築に向けての必要な政策が提言されています。

本レポートでは、インドにおける太陽電池モジュールの廃棄物管理の状況が、以下の様に説明されています。

  • 既に稼働している40GWの太陽光発電の早期損失から、2021年度までに累計28.5万トンの太陽電池モジュール廃棄物が発生していると想定される(IRENA/IEAの推定値を基に算出)
  • 太陽発電モジュールはe-waste(電子廃棄物)としてリストアップされておらず、現行の廃棄物管理規制では廃棄される太陽発電モジュールはカバーされない
     ⇒ 2022年11月に電子廃棄物(E-waste)管理規則の一部に法改正
  • 事業者の意識調査では、回答者の約97%が寿命後の管理の必要性を認識、約87%がリサイクルに関心を示す一方で、太陽電池モジュールメーカー24%だけ廃棄・リサイクルに関与している
  • 科学技術省(The Department of Science and Technology)による研究支援プログラムや、一部の企業による廃棄太陽光パネルの管理を目指す動きもある
     ⇒ 続報はなく、政府も補助金交付などは無い模様
  • アンチモンの環境への溶出による有害な影響を考慮し、有害廃棄物およびその他の廃棄物管理規則の規定に基づく処理が提案されている

将来の適正な廃棄・リサイクルシステムの構築に向けて、政府および産業界それぞれが取り組むべきアクションの提言もされています。

  • 政策立案者
    • 廃棄モジュールの埋立廃棄の禁止措置を導入
    • 太陽電池モジュールに特化した廃棄物管理規制の策定
    • グリーン証明書などのインセンティブの導入、産業セクターによるリサイクルと鉱物回収を奨励するための公平な競争環境の提供
  • 産業界
    • 廃棄物を最小限に抑えるための、有害物質の使用削減や分解可能な設計アプローチの採用
    • モジュール再利用への投資
    • リサイクル技術の開発と実証設備への支援
    • 廃棄物管理と資金調達のための新しいビジネスモデルの構想

最近の動向

また最近の動向として、政府や大学・研究機関、企業などでもいくつかの取組みが見られます。

  • インド政府は、2022年11月に太陽電池モジュールを電子廃棄物(E-waste)管理規則に追加すると通知
  • 政府系シンクタンクのNITI Aayogでは、循環型経済を促進のため、太陽光発電産業も含む委員会を設置
  • KPR工科大学の研究グループは、使用済み太陽電池から高純度のシリコン(純度99.9984%)を回収する新技術を開発したと発表
  • 香港城市大学(City University of Hong Kong)の研究グループは、ブロックチェーンを活用したLCAを通じてのPVパネルの透明性とトレーサビリティを可能にする新しい研究を発表
  • インドにに拠点を置くCerebra Integrated Technologies Limited は太陽光パネルのリサイクルに関してHyundai Corporationと秘密保持契約を締結

CEEWのレポートの著者によれば、太陽電池モジュールの廃棄・リサイクルに関しての変化は徐々に進んではいるものの、散発的に発表される企業の取組みが具体的な行動へはつながっていないとも指摘しています。
規制強化や目標設定が明確になることで廃棄物管理の状況が改善し、リサイクルへの投資が進むことが期待できるとも述べています。

まとめ

インドでは太陽光発電の普及が進んでおり、導入量では日本を越える世界トップ3の市場となる一方で、廃棄・リサイクルに関しては今後の進展が望まれます。

日本国内では米中などに比べて関心が少ないインドですが、エネルギー・環境での日印協力を拡大(関連トピック)するなど今後成長が期待される重要な市場でもあります。

インドから当WEBサイト(および運営担当者)への問合せなども多くなっており、国内で既に太陽光パネルのリサイクルに取組む企業においても、次の成長機会と捉えることが重要だと考えられます。

参考資料