環境省と経済産業省は『再生エネルギー発電設備の廃棄・リサイクルのあり方に関する検討会』の第7回を2024年1月15日に開催しました。
第7回検討会では、これまで議論された太陽光発電設備の廃棄・リサイクルの課題や方向性として中間とりまとめ案が提示され、本とりまとめ案に関する説明や議論がなされています。
(前回までの検討会に関してはこちらから ⇒ 第1回、第2回、第3回、第4回、第5回、第6回)
2050年カーボンニュートラル実現やエネルギー安全保障、資源の輸入依存などを背景に再生可能エネルギーの普及が必要であり、その持続的な導入には地域との共生が不可欠となっています。
しかしながら2012年にFIT制度の開始以降の太陽光発電の急速な普及は、一部の地域社会との軋轢や将来の大量廃棄など多くの課題も顕在化しています。
経済産業省・環境省では、これまで廃棄・リサイクルの課題について検討会(関連トピック)やワーキンググループ(関連トピック)が開催してきました。
本検討会ではこれまでの議論の内容を踏まえ、太陽光パネルを始めとした再生可能エネルギ設備の廃棄・リサイクルに関する議論や関係者へのヒアリングを通じて、今後のリサイクル促進に向けた方向性を指し示すとともに法改正などにより対策を進めていくとされています。
本検討会では、再生可能エネルギーの中でもFIT制度により急速に普及が進んでいる太陽光発電を中心に議論がなされています。
中間取りまとめに関しても太陽光発電設備、特に太陽光パネルの取り扱いに焦点が当たった形となっています。
太陽光発電(太陽光パネル)のライフサイクルに関しては、適正なリユース・リサイクルに向けたガイドラインや廃棄等費用積立制度を創設などの措置が講じられてきましたが、最終処分量の削減や資源循環の実現のためにも更なるリサイクルの促進が求められています。
今後さらに非FIT/FIP案件の増加が想定されており、開発初期から建設工事・運用に至る各事業段階に於いて地域の実情を踏まえた上で、横断的な取組みが必要となっています。
これらの背景の下、これまで議論された事項を論点ごとに方向性を取りまとめ、今後の方向性の更なる具体化に向けて継続的に検討を深めることとして、「中間取りまとめ」として整理されています。
本中間取りまとめはでは、①再エネ発電設備(太陽光発電)の各事業段階での実態と課題、②廃棄・リサイクルの仕組みの基本的な考え方、③廃棄・リサイクルを「情報・モノ・費用」の論点で整理、④今後速やかに対応または引続き検討を深めていく事項、の4点で整理されています。
太陽光発電の事業は初期の開発・建設に始まり、発電設備の運転(維持管理)、事業終了後の撤去・解体、産業廃棄物としての処理など、事業のライフサイクルの各段階で中心となる主体が異なります。
本検討会ではヒアリングや議論を通じて横断的事項も含む各事業段階での現状と課題を整理し、取組むべき対応が示されています。
各事業段階で特有の課題はあるものの、市場予測や事業実態に関する情報や太陽光パネルの含有物質、事業者間の情報共有など、情報やデータの共有・開示方法についても課題があるとされています。
リサイクル技術に関しては既に実用化されているものの、処理施設の地域的な偏在や処理コストや将来の廃棄量の不確実性、ガラスのリサイクルといった課題が指摘されています。
また取組みを進める上での基本的な方向性として、以下の3点を挙げています。
発電事業が20年間と長期間でありライフサイクルで多様な主体が関わることや、発電事業による受益者(発電事業者など)と負担者(地域社会など)が異なることなど、地域社会を含む主体間の連携が今後の適正なリサイクルや資源循環の構築に必要とされています。
重要な課題である社会的コストの最小化には、デジタル技術の活用や連携強化を通じた効率的なシステムが求められるとあります。
本項では太陽光発電設備の廃棄・リサイクルの実態や認識された課題、仕組み構築に向けた基本的な考え方を基に、「情報・モノ・費用」を軸として考え方が示されています。
全国規模で、ライフサイクル全体の各プレイヤーが、「再エネ発電設備(モノ)」を適切に処理できるよう、必要な「費用(カネ)」と「情報」が円滑に流通する枠組みを構築することで、適切な廃棄・リサイクルが担保される仕組みとしていく。
引用元:環境省
上記の議論を踏まえて、「速やかに対応する事項」と検討の方向性を踏また「継続して検討を深める事項」が示されています。
≪速やかに対応する事項≫
≪新たな仕組みの構築や制度的な対応に向けて、引き続き検討を深める事項≫
今回大きなポイントとして、直近で「太陽光パネルの含有物質情報の登録」が施行されることです。
データベース上に含有物質情報の登録(太陽光パネルの型式登録への付加情報)され、新規FIT認定で使用が求められることに加え、議論の中では今後の撤去・廃棄にも活用できる様に広く公開していくとされています。
委員からは中間取りまとめに関して概ね好意的な意見が大勢を占めたものの、今後の検討進め方や議論すべき事項などの指摘やコメントがされています。
※PVリサイクル.com®により要約
検討会の中間取りまとめでは、再エネ発電設備(太陽光パネル)の適正な廃棄・リサイクルに関して、今後の検討の方向性と論点整理が行われ、一部では法改正を伴う取組みが進展することが期待できます。
一方でこれまでの検討会の議論やヒアリングでも十分に議論がされていないと思われる事項もあり、今後の議論で進展があることが期待されます。
今回の検討会では、再エネ発電設備(太陽光パネル)の廃棄・リサイクルに関する中間取りまとめが行われ、議論の内容と今後の対応が整理されました。 今春には太陽光パネルの含有物質情報がデータベース化されるなど、法改正を含む実効性のある取り組みも期待されます。
しかし、未だ全国で進む太陽光パネルリサイクルの取り組みや企業の動向などが包括的に整理されておらず、将来の廃棄量の予測の精緻化や地域ごとの分析が進んでいるとは言い難いと考えられます。
今後の継続的な議論や法改正などを通じて、太陽光パネルリサイクルの取り組みの方向性に注目する必要があります。