(公開日:2024-3-25)
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)では、『太陽光発電主力電源化推進技術開発』が2020~2024年度の5年間で実施されており、2024年3月21日に2023年度成果報告会の発表スライドが公表されています。
太陽光パネルリサイクルに関わる項目では『太陽電池モジュールのリサイクルに関わる調査』が発表されており、公開されている概要を整理・紹介していきます。
(関連トピック)
2012年以降のFIT制度により太陽光発電導入量は急増したことで、普及後の社会を支える戦略が必要となっており、導入拡大に伴う安全性や廃棄物等の懸念も指摘されています。
2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、長期安定的な主力電源として再生可能エネルギーが位置付けられており、太陽光発電の更なる導入が必要となる一方で大量導入に向けた課題に取り組む必要性も指摘されています。
NEDOでは大量導入社会に向けた現状分析、課題抽出、課題解決の方策を検討し、今後の技術開発の指針として『太陽光発電開発戦略2020(NEDO PV Challenges 2020)』が策定され、開発戦略を実現するために5年間でプロジェクトが遂行されています。
また本プロジェクトは、過去2014年から実施されてきた技術開発の後継且つ包括的な事業として位置づけられている様です。
太陽光パネルのリサイクルに関しては、リサイクル技術に関して2件、動向調査1件が実施されています。
またこれらの技術開発は、2019年度に実施された『太陽光発電システム長期安定電源化基盤技術開発プロジェクト』を継続実施されたものとなっている様です(関連トピック)。
太陽電池モジュールのリサイクルに関わる国内の技術開発動向、普及動向、政策動向、実施事例などの調査に加えて、太陽電池モジュールの分離・マテリアルリサイクル技術開発等の取組の参考となる基礎情報を収集・整理するとされています。
2024年度までに、リサイクルに関わる調査結果を太陽電池モジュールの分離・マテリアルリサイクル技術開発へフィードバックすることを目標としており、今回の発表では太陽光パネルガラスの受入れ条件やポテンシャルに関して報告されています。
「受入可能性調査」としてグラウスール製造の場合に、「製造可能なグラスウール製品として品質が満足できるか」、「アンチモンの溶出がどの程度か」が試験等により調査され、以下の結果が報告されています。
結果の概要は、以下の通りです。
1. グラスウール製品としての性能試験
2. 溶出試験
3. 揮発試験
4. 腐食に関する議論
本発表では、ガラスカレットからのアンチモン溶出試験とその結果の考察が報告されています。
本検証では、太陽光パネル由来のガラスカレットからのアンチモン溶出量を、カラム溶出試験(参考)で行われています。
通常行われるバッチ試験(環境庁告示13号やJIS K 0058-1など)とは異なり、対象物に水を通過させることで実際の環境に近い状態での溶出特性(最大濃度や溶出濃度の変化など)を観察できるとされています。
今回の検証では「ISO21268-3」に準じたカラム溶出試験が実施されたとあります。
太陽光パネルガラスからのアンチモン溶出結果は以下の通りと報告されています。
通水直後の溶出量(アンチモン濃度)が0.035mg/Lと最も高く、その後通水を続けることで溶出量は低下する傾向が確認できます。
最終的(累積液固比が10.0)に、定量下限値未満(<0.001mg/L)の結果を得たとされています。
太陽光パネルガラスからのアンチモン溶出量は、溶出試験で測定されたアンチモン濃度の積算溶出量となり、試料の質量から換算することができます。
試験の結果から、アンチモンの溶出量は「0.041mg/kg(液固比10)」と推計されるとあります。
アンチモンは有害物質には規定されていないものの、人の健康の保護に関連する物質として要監視項目(参考:環境省通知)となっており、0.02mg/Lの指針値が定められています。
発表資料では、「0.041mg/kg < 0.2mg/kg」のため環境安全性に問題無いと報告されています。
NEDOが2020年度~2024年度に実施している技術開発の2023年度の発表資料のみの公開であり、調査・検証内容の一部のみの公開となっています。
今回の発表資料では、太陽光パネルガラスをグラスウールの原料を想定した場合の各種検証になっていますが、実際にはガラス再生に向けた研究開発や製品化は色々な取組みがなされています(関連トピック)。
最終的な成果報告は今後の公開を待つことになりますが、アンチモンの安全性に関してはその他の用途における一般的な指標策定が求められます。。