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環境省:太陽光発電設備リサイクル制度小委員会(第1回)開催

環境省「中央環境審議会 循環型社会部会 太陽光発電設備リサイクル制度小委員会」と経済産業省「産業構造審議会 イノベーション・環境分科会 資源循環経済小委員会 太陽光発電設備リサイクルワーキンググループ」合同会議の第1回が、2024年9月13日に開催されました。

第1回検討会では、太陽光パネルの廃棄に関する実態の整理、過去検討会での提言を元に、今後の議論を進めるに際しての論点などが提示されています。

合同会議(審議会)開催の背景と目的

2050年に向けてのカーボンニュートラル化やエネルギー安全保障、輸入に頼る資源の問題などから、再生可能エネルギーの重要性の高まりに伴い、再生可能エネルギーの持続的な導入には地域との共生が不可欠となっています。
一方で2012年に開始したFIT制度による太陽光発電の急速な普及により、地域との葛藤や将来の廃棄など、多くの課題も浮き彫りになっています。

これまで経済産業省・環境省では廃棄・リサイクルの課題について検討会関連トピックやワーキンググループ関連トピックが開催されています。
本検討会ではこれまでの議論の内容を踏まえ、太陽光パネルの大量廃棄に対する対策としてリサイクル技術、資源循環、法制度の専門家などの議論や業界団体や自治体などからのヒアリングを通じて、具体的なリサイクル促進策をまとめる予定となっています。

また今回の検討会では、風力発電設備(特にブレード)や他の再生可能エネルギー(中小水力・バイオマス・地熱)についても、それぞれの適性に応じた廃棄・リサイクルの仕組み作りが議論されるとあります。

太陽光発電設備の廃棄・リサイクルをめぐる状況

今回第1回の合同会議では、太陽光発電設備の廃棄・リサイクルに関しての実態、これまでの取組み、また過去に開催されてきた検討会における議論の取りまとめが説明されています。
今後、太陽光パネルのリサイクルを制度化の議論を行うにあたっての、前提条件の整理がされています。

政府のこれまでの取組み

2030年の再エネによる電源構成比36~38%に向け、2022年には21.7%まで増加しており、太陽光発電の導入量は近年では年間5GW程度導入が続いています。
FIT制度により導入が加速したものの、一方では地域との共生や将来の大量廃棄などの懸念が顕在化しています。

政府では、再エネ導入に伴うこれらの課題に対応するために、法改正も含む一連の取組みが実施されてきました。

太陽光発電設備の廃棄・リサイクルに関する近年の取組み(引用元:環境省
使用済太陽電池モジュールの排出状況及び処理実態

本項では環境省で実施されている最新の調査内容関連トピックなどに基づき、使用済太陽電池モジュールの現状が説明されています。

  • 使用済太陽電池モジュールの排出量予測
  • 太陽光発電の設置形態、太陽電池モジュールの種類・構造、含有物質(有害物質、有価金属としての銀)
  • リユース・リサイクル・廃棄処分の流れ、廃棄物処理法上の位置付け
  • 排出・処理に係る実態(処理量のアンケート調査)処理技術の分類
  • リサイクルにおける課題、リサイクルガラスの最新動向
太陽光パネルの排出量予測(引用元:環境省
太陽電池モジュールの処理実態の抽出調査結果(引用元:環境省
太陽電池モジュール処理技術の分類(引用元:環境省

特に排出予測量に関しては、従来の簡易推計による『排出量ピークが年間80万トン』ではなく、シナリオ分析による数字が説明されています関連トピック
また、リサイクル技術の主要メーカーの処理能力や特徴の比較が説明されています関連トピック

再エネ発電設備の廃棄・リサイクルのあり方に関する検討会 中間取りまとめの概要

今回の合同会議に先立ち開催されていた「再生可能エネルギー発電設備の廃棄・リサイクルのあり方に関する検討会」の中間取りまとめ(2024/1/30発表)の内容が、再度確認されています。
廃棄・リサイクルの仕組みの基本的方向性(事業段階と検討領域)と、今後議論を進めるにあたっての論点(情報・モノ・カネ、対策の時間軸)が整理されています。

論点の整理(引用元:環境省

※過去の検討会(中間取りまとめ)についての要約はこちらのトピックから ⇒ 第7回検討会中間取りまとめ

本審議会の論点

過去の「中間取りまとめて」で提言されている通り、本審議会では太陽光発電設備のライフサイクルを通して適切に処理の枠組みを構築するうえで、「モノ・費用・情報」の3点から制度的な検討を行うとされています。

以下が論点として提示されている、主な内容となります。

<モノについての論点>

  • リサイクルを求める太陽光パネルの範囲や太陽光パネル以外の設備
  • 今後新設される太陽光発電設備や非FIT/FIP設備への対応、既存の制度との関係の整理
  • 解体・撤去~収集運搬~リユースやリサイクルでの関係事業者間で責任分担
  • 事業終了後に太陽光発電設備の放置を防ぎ、適切に管理するための措置
  • 効率的な収集運搬の仕組み
  • 必要な処理能力、一定の品質以上で再資源化、太陽光パネルから回収された再生資源が利活用
  • リユースパネルの利用促進
  • 排出ピークの平準化を図るために有効な手段
  • 製造業者に環境配慮設計を促すための仕組み

<費用についての論点>

  • 解体・撤去及び運搬、再資源化に係る費用についての適切な負担のあり方
  • 解体等・再資源化等費用の設定、費用確保の方法(いつ、どのような形で)
  • リサイクル事業の予見性確保、人材の育成、更なるコスト低減への支援

<情報についての論点>

  • 使用済パネルを適切に解体・再資源化する情報な必要の特定、トレーサビリティの確保
  • 費用効率的に情報管理するための既存の制度・システムとの連携
  • 関係事業者間で廃棄・リサイクルに関する情報が適切に伝達・共有されるための、期待されるそれぞれの役割

委員からの指摘・コメントなど

本合同会議は、一般の傍聴者向けにオンラインで発信していましたが開催時のライブ配信のみとなっており、後日の視聴ができない環境になっています。
したがって委員の発言の詳細が確認できないため、本項目は割愛します。

なお一部委員からは、出席できないことによる意見書が公開されています。

まとめ

導入が急速に進んだ太陽光発電設備の大量廃棄への懸念を背景に、過去の検討会で適切な廃棄・リサイクルに向けた提言が行われ、リサイクル義務化に向けた議論が始まりました。

2024年5月には「再資源化事業高度化法案」が成立し、太陽光パネルの再資源化促進も視野に入れられており、リサイクルシステムの構築に向けた法整備が進むと考えられます。

太陽光発電事業や資源循環・リサイクル事業に大きな影響を与えるだけでなく、社会全体にも大きな影響を及ぼすテーマであり、今後の議論の進展を注視する必要があります。

参考資料