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LiBリサイクルに関する行政動向、業界団体取組み②

(公開:2024-09-23)

2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、再生可能エネルギーの導入や脱炭素に向けた取組みが、官民一体で進められています。
これらの取組みの中には自動車の電動化(EV化)や蓄電池の導入などが含まれ、今後リチウムイオン電池(LiB)の市場普及がさらに進むことが予測される一方で、太陽光パネル同様に将来的な適正な廃棄やリサイクルが課題となります。

前回取り上げた経済産業省の動向に引き続き、今回は環境省および自治体の取組みを紹介していきます。

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環境省の政策動向

環境省においても、自動車リサイクルや従来の電池のリサイクルなどで適正処理の取組みが進められてきました。
最近ではリチウムイオン電池起因の火災などへの対応や、脱炭素型資源循環の議論も活発になっています。

政策動向

リチウム蓄電池関係

  • 処理困難物としての「リチウム蓄電池関係」の資料が、自治体向けにWEBサイトで公表
     ⇒ リチウム電池起因の火災防止の関連、回収フローなどの情報が主
  • リチウム蓄電池の処理が可能な「リチウム蓄電池等リサイクラーリスト」に12事業者が紹介
(引用元:環境省

産業廃棄物広域認定制度の認定状況

  • 産業廃棄物広域認定制度で、リチウムイオン電池(従来電池や蓄電システム含む)を対象として23事業者が広域認定を取得済(2024年7月時点調査)
     ⇒ メーカーとして回収しているものもあり、実際の処理を行っていないケースもある

資源有効利用促進法

  • 資源の有効な利用の促進に関する法律」では、循環型経済システム構築に向けて、事業者等による3R推進が求められている
  • リチウム二次電池は「指定表示製品」、「指定再資源化製品」として定められている
     ⇒ 定置型蓄電池に関しては、具体的には明示されていない
委員会・検討会

自動車リサイクル専門委員会

  • 定期的に開催されている「自動車リサイクル専門委員会」で車載用LiBのリサイクル・リユースが議論
  • 第51回にて、車載用LiBリサイクルが議論、日本鉱業協会による自動車リサイクルの取組みが報告
     ⇒ LiBリサイクルのプロセス・事例、リサイクルの課題などを指摘
  • 第58回では、自動車リサイクル高度化財団による実施事業の報告
    • EVの電池循環を支援する価値顕在化・流通システムの構築(カウラ株式会社)
    • 「Li-ion電池適正処理施設調査」により抽出した施設におけるサンプル電池処理実証(矢野経済研究所)
    • LiB適正処理促進に向けた全国のリサイクル可能施設のインフラ調査・公開(ブライトイノベーション)

静脈産業の脱炭素型資源循環システム構築に係る小委員会

自動車リサイクルのカーボンニュートラル及び3Rの推進・質の向上に向けた検討会

  • 自動車リサイクルのCN及び3R推進に向けた検討会」で、LiBリサイクルも一部議論されている
  • 令和4年度第1回でLiBリサイクルに関する議論がされている
    • バッテリー(鉛、LIB)の排出実態の把握,LIBも含む部品リユースの検討(資料4)
    • 欧米のLiB処理状況、海外自動車メーカーのLiB処理動向が報告 (参考資料3)
  • LiBに関しては「蓄電池のサステナビリティに関する研究会(経産省)」でCFPを議論
     ⇒ 本検討会では、処理方法などの詳細には特に触れられていない

環境省による補助事業や実証・研究開発

環境省においても、リサイクル設備の導入への補助やリサイクル技術の実証・開発が行われています。

補助事業

環境省では、脱炭素型リサイクルの実現に向けた補助金を交付しておりLiBリサイクルも対象になっていますが、実際の採択は少ない様です。

  • プラスチック資源・金属資源等の脱炭素型有効活用設備等導入促進事業(2023年度~ 2027年度)
  • プラスチック資源・金属資源等の脱炭素型有効活用設備等導入促進事業(2022年度~ 2027年度)
     ⇒ 令和4年度に「VOLTA」が採択、令和5年度は採択無し
  • 脱炭素社会構築のための資源循環高度化設備導入促進事業(2021年度~ 2023年度)
     ⇒ 令和3年度に「DOWAエコシステム」が採択、令和4年度は採択無し
  • 二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金「リチウム蓄電池リサイクル設備導入事業」(令和5年度補正)
実証事業: 循環型社会・3R関連/自動車リサイクル関連
  • 国内資源循環体制構築に向けた再エネ関連製品及びベース素材の全体最適化実証事業
     東レ:膜技術による廃リチウム蓄電池からの省CO2型リチウム回収技術実証事業(令和5年度)
  • 脱炭素型金属リサイクルシステムの早期社会実装に向けた実証事業
     JERA:リチウムイオン電池の新規リユース技術開発実証事業(令和2年度)
     JERA:車載用電池のリユース技術開発実証事業(令和3年度、令和4年度)
     三菱マテリアル:北九州地域での全体最適LIBリユース・リサイクル技術・システム実証(令和2年度、令和3年度、令和4年度)
  • 省CO2型リサイクル等設備技術実証事業/低炭素製品普及に向けた3R体制構築支援事業
     三菱マテリアル:次世代自動車LIBのリユース・リサイクルにおける低CO2削減実証事業(平成29年度)
     太平洋セメント:車載用等の使用済リチウムイオン電池の低炭素型リサイクルシステム実証事業(平成29年度、平成30年度)
     中部電力:電動車の駆動用電池のリユース・リサイクル技術開発実証事業(平成30年度)
     リコー:ハイブリッド車用リチウムイオン電池のリマニュファクチャリング検証事業(平成30年度、平成31年度)
  • リサイクルシステム統合強化による循環資源利用高度化促進業務
     三菱総研:リサイクルシステム統合強化による循環資源利用高度化促進業務(令和2年度、令和3年度、令和4年度)
環境研究・技術情報総合サイト(独立行政法人 環境再生保全機構)

環境研究総合推進費」を活用し、LiBリサイクルや資源循環に関する研究が実施されています。

  • リチウムイオン電池のさらなる普及を見据えた資源循環システムの安全性と資源回収性の確保(国立環境研究所、2024〜2026)
  • 地域企業を中核としたLMO系リチウムイオン電池域内循環システムの提案(東北大学、2022〜2024)
  • 廃棄二次電池からのリチウム循環利用を促す酸化物多孔体の開発(大阪大学、2021〜2023)
  • リチウムイオン電池等の循環・廃棄過程における火災事故実態の解明と適正管理対策提案(国立環境研究所、2021〜2023)
  • リチウムイオン電池の高度リサイクル(本田技研工業、2015~2016)
  • バイオリアクターによる廃二次電池溶解処理液からのMn、Ni、Co同時回収(広島大学、2015~2017)

地方自治体の取組み

地方自治体が独自に蓄電池リサイクルの取組みやリサイクル施設への補助を実施している事例も一部あります。

  • 東京都:「東京都太陽光発電設備高度循環利用推進協議会(第6回)」で、蓄電池リサイクルの実態が報告
     ⇒ 都内の住宅用蓄電池の廃棄状況の報告、ほとんど廃棄されていない
  • 福岡県:「グリーンEVバッテリーネットワーク福岡」を2024年7月に立上げ
     全国初のEVバッテリー資源循環システム構築に向け、自動車メーカーや金属リサイクル事業者など17社に加えて公益団体などが参画
  • 補助金:3R施設/産業廃棄物処理施設導入補助
     埼玉県、京都府、福岡県などで採択実績あり

太陽光パネルのリサイクルに関して自治体が積極的なのに比べて、LiBリサイクルは現時点では取組みが限定的となっています。

まとめ

環境省は資源の有効活用を推進するため、従来から電池の適切な回収を進めており、最近ではリチウムイオン電池の火災対策も強化されています。
しかしLiBリサイクルに関しては、施設導入補助や技術開発の取り組みが限られており、経済産業省のサプライチェーン強化策と合わせて、今後リサイクル環境の整備が進むことが期待されています。

次回のトピックでは、LiBリサイクルに関するNEDOおよび業界団体の取組みを紹介します。

≪≪ ①    ③ ≫ ≫

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参考資料