太陽光パネルリサイクルの情報を掲載しております。

環境省:太陽光発電設備リサイクル制度小委員会(第2回)開催

環境省「中央環境審議会 循環型社会部会 太陽光発電設備リサイクル制度小委員会」と経済産業省「産業構造審議会 イノベーション・環境分科会 資源循環経済小委員会 太陽光発電設備リサイクルワーキンググループ」合同会議の第2回が、2024年10月1日に開催されました。

第2回小委員会では、太陽光発電設備の廃棄・リサイクル制度構築に向けて、各論点での議論が実施されています。

(前回までの検討会に関してはこちらから ⇒ 第1回

制度検討に当たっての論点

太陽光発電設備の廃棄・リサイクルに関しては、ライフサイクル全体において各プレーヤーが「太陽光パネル(モノ)」を適切に処理できるよう、必要な「費用」や「情報」が円滑に流通する枠組みの構築が必要とされており、「モノ・費用・情報」の3点から制度的な検討を行うとされています。

それぞれの論点について、事務局から資料の提示と論点の説明が行われています。

【モノ】に関する論点

制度の対象としての太陽光発電設備の形態や、太陽電池モジュールの種類・構造が説明されており、リサイクル制度の対象としての範囲に関しての考え方が提示されています。

適正な廃棄・リサイクルの徹底のためには、原則全ての太陽光パネルを制度の対象とすることが求められます。
しかしながら排出量が極めて少ない種類の太陽電池モジュールや放置の懸念が低いと考えられるものなど、設置形態や種類等に応じて制度の対象及び規律の強度を検討することも提示されています。

太陽光発電設備の設置形態、事業形態(引用元:環境省

最新の太陽光パネルの排出量推計によれば、2030年代半ばから増加し最大50万トン/年程度と見込まれており、仮に全てが直接埋立処分された場合には2021年度の最終処分量869万トン/年の約5%に相当するとされています。

最終処分量を削減する必要があり、可能な限り多くの資源を回収・再資源化が求められるものの、市場原理のみではリサイクルが進みづらく、一定以上の品質でパネルの流通・再資源化が行われる仕組みや使用済太陽光パネルのリサイクルを義務付ける制度を創設が提案されています。

太陽電池モジュールの流れのイメージ(引用元:環境省

既に個別リサイクル法の枠組みにより処理されている自動車や家電4品目などの処理量と比較しても、太陽光パネルも将来的には同程度とされています。
しかしながら太陽光発電設備の特徴として、製品のライフサイクル(事業期間)が長いことや使用済製品の取引きの商習慣がないなどの特徴が指摘されています。

個別リサイクル法との比較(引用元:環境省

発電事業終了後に放置されるケースにおいては、廃棄物処理法に基づき指導や行政代執行が可能であるものの、事業終了の判断や設置形態などで廃棄物に該当しないと判断されるケースも想定されており、制度的対応の必要性が説明されています。

事業段階における法規の適用範囲(引用元:環境省
【費用】に関する論点

太陽光発電設備を廃棄する場合には、太陽光発電設備の解体・撤去・運搬・埋立処分等の適正処理を実施するための費用『解体等費用』が必要なことに加え、リサイクル義務化がにより新たに太陽光パネルを再資源化するための再資源化費用が必要となります。

解体等費用・狭義の再資源化費用について、「誰(主体)」に「いつ(ライフサイクルの段階)」これらの負担を求めるべきかの検討が必要とされています。

解体等費用と再資源化費用(引用元:環境省

それぞれの費用の性質や他制度との比較、廃棄物・リサイクル対策の基本的な原則としての「排出者責任」と「拡大生産者責任(EPR)」などの考慮した検討が提案されています。

排出者責任と拡大生産者責任(引用元:環境省
【情報】に関する論点

使用済太陽光パネルの適切な廃棄・リサイクルにおいて、「モノ・費用」の流れを円滑にするために必要な情報の整理した上での制度設計を考える必要があると説明されています。

現在、太陽光発電設備の各事業段階ごとに適用される関連法令に基づき、対象となる設備等の情報が各管理主体で把握・管理されているが、法令の対象となる非FIT/FIP設備などの情報は詳細に把握できていないとされています。

事業段階と現法令で把握可能な情報(引用元:環境省

委員からの指摘・コメントなど

事務局から提示された論点に関して、対象範囲として原則全数の太陽光パネルにすることやEPRも含めた費用負担など、議論の方向性に関して賛意を示す意見が多くなっています。
それぞれの論点について、委員から多くの指摘やコメントが上がっています。

<モノについての論点>

  • ペロブスカイト太陽電池などの新たな技術・製品への対応
  • 「リサイクルの定義」を十分議論する必要
  • 特定事業者でなければ処理できないパネルなど、行政・業界団体で調査・特定すべきでは?
  • 再資源化・再商品化において、柔軟な仕組みを持たせる必要性
  • 放置の懸念が少ない住宅と非住宅・事業用で対象範囲や時期を分けるのも一案
  • 長期利用・適切なリプレースのあり方、リユースに誘導する視点でも議論すべき
  • 「事業終了・放置」をどう定義づけるか、「廃棄物の判断」において太陽光パネル特有の考え方
  • リサイクルしやすいパネルや廃棄ペースの平準化など、事業者へのインセンティブも検討すべき

<費用についての論点>

  • 生活者視点としては費用が重大関心、法外な料金への対応や定額制など一般家庭が安心できる制度
  • 物価変動やリサイクル技術の進展も考慮に入れた費用算定が必要
  • 再資源化費用は事業者にとって「不意打ち」ではなく、事業リスクの範囲内にとどめる配慮
  • 海外メーカーに費用負担を義務付けできるか?
  • 費用負担の前提として、リサイクル技術・費用の実態や将来の廃棄見通しを確実に把握すべき
  • FIPゼロ円案件やPPAなどから費用の徴収方法

<情報についての論点>

  • 長期間に渡る情報管理の主体をどうするべきか?
  • 事業者の登録制度
  • 小売電気事業者との情報共有による事業実態の把握を検討

<制度化全般について>

  • 分かりやすい制度が求められる
  • システム全体を厳しくし過ぎるとコストがかかる為、バランスに配慮が必要
  • 海外の法制度との比較、国際的な考え方との整合も考慮

まとめ

第2回合同会議では太陽光発電設備の廃棄・リサイクル制度として、太陽光パネルの再資源化(リサイクル)に向けて対象を全数し必要な費用は拡大生産者責任(EPR)も含めた議論が進められています。
今後は事業者へのヒアリングなどを通じて、課題や論点の整理が進み、さらに深い議論が行われる予定です。

現時点で全国に80社以上が太陽光パネルのリサイクル施設を導入していますが、リサイクルの実現には依然として多くの課題が残っています。
特に、処理費用の割高さやガラスの再利用、処理施設の地域的な偏在も課題だと考えられます。

リサイクルの義務化は、排出事業者およびリサイクル事業者の双方の事業に大きな影響を及ぼす可能性があり、今後の議論に注視する必要があります。

参考資料