(公開:2024-10-12)
2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、再生可能エネルギーの導入や脱炭素に向けた取組みが、官民一体で進められています。
これらの取組みの中には自動車の電動化(EV化)や蓄電池の導入などが含まれ、今後リチウムイオン電池(LiB)の市場普及がさらに進むことが予測される一方で、太陽光パネル同様に将来的な適正な廃棄やリサイクルが課題となります。
前回までの行政の動向に引き続き、今回はNEDOおよび業界団体の取組みを紹介していきます。
≪注意事項≫
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NEDOによる技術開発
NEDOでは蓄電池開発プロジェクトが進められており、蓄電池(LiB)のリサイクルに関する技術開発も進められています。
グリーンイノベーション基金事業(2022年度~ 2030年度)
高性能蓄電池・材料開発に加えてリサイクル関連技術開発も実施。
⇒ 再利用可能な品質、競争力のあるコストで、Li70%、Ni95%、Co95%以上の回収技術を開発
先進・革新蓄電池材料評価技術開発(第2期)(2018年度~2022年度)
次世代全固体蓄電池材料の評価・基盤技術開発(2023年度~2027年度)
電気自動車用革新型蓄電池開発(2021年度~2025年度)
NEDO懸賞金活用型プログラム
業界団体の取組み
従来から電池の回収・リサイクルや自動車リサイクルを行う業界団体などが、将来増加が予測されているLiBリサイクルに関しても取組みが進められており、国の検討会などでも現状の課題や今後の取組み姿勢などが発信されています。
一般社団法人 JBRC
- 2001年施行の「資源有効利用促進法」に基づき「小型充電式電池」のリサイクル活動を推進
- 自動車用電池、定置用蓄電装置は回収対象外
- 回収可能法人(協力店・協力自治体)を通じて廃棄電池を回収し、リサイクラーに処理を委託
⇒ 具体的なリサイクラーリストの情報は無いが、以下の5社が紹介されている
一般社団法人電池工業会(BAJ)
- 電池工業会では資源の有効利用の観点から、蓄電池メーカによる広域認定によるリサイクルを推奨
- 広域的処理認定業者として、4社が認定取得済
⇒ 古河電池、GSユアサ、昭和電工マテリアルズ/エナジーシステムサービスジャパン、GSユアサエナジー
- 定置用(産業用、家庭用)リチウムイオン蓄電池は、本スキームによる適正処理の対象外、産業用用途で発生した自動車用蓄電池は引き取り可能
- 小型電池はJBRCで実施中、家庭用蓄電システムはJEMAの共同回収スキームとの連携を検討(第5回 蓄電池産業戦略検討官民協議会)
一般社団法人日本電機工業会(JEMA)
- 住宅用リチウムイオン蓄電システムの適正処理のための共同回収
- メーカが自主的な取組みとして、個社毎に広域認定取得
- リチウムイオン蓄電システムの回収を2020年5月から開始、メーカ10社が運営
- 今後はLiB廃棄台数が増加することから、共同回収スキームを構築予定
一般社団法人電池サプライチェーン協議会(BASC)
- 電池SC全体の競争力強化とグリーン化を目指し政策提言やルール化を推進、会員数213社(2024/7現在)
- メーカが自主的な取組みとして、個社毎に広域認定取得
- リチウムイオン蓄電システムの回収を2020年5月から開始、メーカ10社が運営
- 蓄電池産業戦略検討官民協議会にて、SC上の課題や国への要望を提言
- 2024年6月に「2024年度版 政策提言書」作成、 経産省へ国内の環境整備強化を提言
- リユース/リサイクル市場創出に向けたBaaS事業実証支援
- リサイクルのためのブラックマスのルート構築に向けたルール策定(HSコード統一等)
- リサイクル国内エコシステム構築に向けた韓国等との国際連携支援
公益財団法人 自動車リサイクル高度化財団(J-FAR)
自動車リサイクルの高度化等に関する調査研究、自動車メーカーからの拠出金による助成事業実施、蓄電池に関して以下の事業(公募事業/自主事業)が実施されています。
- EVの電池循環を支援する価値顕在化・流通システムの構築(カウラ、2023年度)
- 「Li-ion電池適正処理施設調査」により抽出した施設におけるサンプル電池処理実証(矢野経済研究所 2022年度)
- LiB適正処理促進に向けた全国のリサイクル可能施設のインフラ調査・公開(ブライトイノベーション、2019年度)
また加盟する自動車メーカー各社では、「自動車リサイクル収支余剰金を活用したリサイクル高度化支援事業」として、個社自主事業としてLiB関連の実証・研究が実施されています。
- リチウムイオンバッテリー(LiB)の寿命延長技術開発(非破壊寿命診断)(日産自動車他)
- 容量低下リチウムイオンバッテリーの再生技術開発(日産自動車他)
- 使用済みリチウムイオン二次電池からの高選択的熱応答性ポリマーと超高回収量捕集ポリマーの段階的使用によるレアメタル完全リサイクルシステムの開発(スズキ)
- バイオマス由来の硫黄担持吸着材による使用済リチウムイオン電池溶解処理溶液からの高効率レアメタル分離回収技術の開発(スズキ)
- 小型リチウムイオン電池リユース技術開発(スズキ)
- バッテリーリユースのグレーディング技術実証(三菱自動車他)
- リチウムイオン電池の高度リサイクル(本田技研他)
一般社団法人自動車再資源化協力機構(自再協、JARP)
自再協を窓口としたLiB共同回収システムを構築し、2018年10月より広域認定として運用しています。
委託処理施設として、12社が指定されています(2024年7月時点)。
日本鉱業協会(JMIA)
回収されたリチウムイオン電池などは、分離・選別・焙焼工程を経てブラックマス※として精錬事業者などによりニッケルやコバルトなどの有価金属が回収されます。
日本鉱業協会に加盟する製錬・リサイクル事業者など主にこれらの最終工程を担っており、同協会の再資源化部会に廃棄物処理・リサイクル事業所などの情報が掲載されています。
また、非鉄大手8社のサステナビリティとCNに向けた取組みの中で、LiBリサイクルに関しても説明されています。
※ブラックマス:リチウムイオンバッテリーを熱処理した後に得られる粉体(引用元:DOWAエコシステム)
まとめ
GX推進においては、蓄電池産業での環境負荷軽減だけでなく、サステナビリティの確保を目的としてリサイクルが重要視されています。NEDOによる蓄電池関連プロジェクトでも、リサイクル技術の開発が積極的に進められています。
また業界団体においても、既存のバッテリー回収・リサイクルのスキームを活用するだけでなく、今後増加が見込まれるリチウムイオン電池の廃棄に対応したリサイクル事業化の動きが加速しています。
今回ご紹介した3つのトピックに関する詳細は、こちらのスライドでもご覧いただけます。興味のある方は、ぜひご活用ください。
≪その①≫ ≪その②≫
参考資料