環境省「中央環境審議会 循環型社会部会 太陽光発電設備リサイクル制度小委員会」と経済産業省「産業構造審議会 イノベーション・環境分科会 資源循環経済小委員会 太陽光発電設備リサイクルワーキンググループ」合同会議の第4回および第5回が、それぞれ2024年10月28日および29日に開催されました。
第4回/第5回小委員会では、太陽光発電設備の廃棄・リサイクル制度構築に向けて、関係者へのヒアリングが実施されています。
(前回までの検討会に関してはこちらから ⇒ 第1回、第2回、第3回)
第4回の関係者ヒアリング
第4回小委員会では、太陽光パネルのリサイクル・リユースに関連する業界団体・企業の3者からのヒアリングが実施されました。
- 公益社団法人 全国解体工事業団体連合会
- 一般社団法人 太陽光パネルリユース・リサイクル協会
- AGC株式会社
全国解体工事業団体連合会へのヒアリング
解体工事業に関わる事業者の業界団体として、主に太陽光発電パネルの解体・撤去での事例や課題を中心に説明がされています。
- メガソーラーや一般家屋などからの撤去実績が限られており、データの把握が進んでいない
- 適切な撤去・解体やリサイクル率向上には事業者、特に解体現場の理解度向上が必要
- いわゆる「ミンチ解体」を回避するには、「人力以外は違反」などの強い表現も必要ではないか
- 解体現場とリサイクル処理施設の位置関係や処理能力が、費用算出に影響する(ex. 工期が長いと工数増)
- 47都道府県それぞれに処理能力の高い施設があることが、リサイクルを行う前提
- やむを得ずリサイクルできなかった場合の対応を、検討・議論する必要がある
- リサイクル製品の一定程度の使用義務化など、販路を確保する議論が必要(ex. 再生砕石は販路減少のため、資源として循環せず滞留)
太陽光パネルリユース・リサイクル協会へのヒアリング
太陽光パネルのリサイクル・リユースに関連する事業者などにより構成される業界団体として、実際のリサイクル・リユースの現状や課題認識、将来展望などが説明されています。
- 社会的により望ましい処理が選択される仕組みであるべき(逆選択が生じない、インフォーマルな事業者の排除)
- リユース可否の最終判断は、リユース事業者にて洗浄・検査等を行った後に確定する
- リサイクルにおいては、FITにおける開示情報(溶出の有無、埋立基準のための情報)ではなく「含有量」の情報が重要
- 現在の処理費用は「12,000円/kW程度(1枚当たり3,000円)」、コストの大半は固定費(人件費+設備費用+土地建物)が占めるため費用低下は想定しにくい
- 事業の採算性としては、設備能力の7~8割の物量が必要
- 処理/リサイクル技術の目指すべき水準で、再資源化の内容が異なる
- ガラスのリサイクルはGHG削減に寄与するため、再生製品メーカーへの支援や消費者へのインセンティブが必要
- 離島や災害・火災など、通常のリサイクルフローで対応できない例外的な事例への対応が必要
AGC株式会社へのヒアリング
国内大手ガラスメーカーのAGC(株)からは、太陽光パネルガラスのリサイクルに関する取組みが紹介されています。
- ガラスのリサイクルにより「天然資源の利用削減、CO2排出量削減、産業廃棄物の埋立削減」などの環境への影響削減や、海外からの原料調達が抑えられることに依る経済安全保障につながる
- 太陽光パネルの熱分解方式(新菱、トクヤマ)に依るガラスカレットを使用し、板ガラスにリサイクルする実証試験に成功、実際の製品へのカレット投入も可能
- ガラスの高度リサイクル実現に向け、「熱分解方式の導入促進」や「製造時のアンチモン発色防止技術」が課題
- ガラスカレットの受入品質の課題として、ガラスの組成(含有物質情報)やリサイクルでの異物混入、組成分析機器の導入などが挙げられる
委員との質疑応答・意見交換(第4回)
関係者からのヒアリングに対して、委員との間で質疑や意見交換がされており、主な内容は以下の通りです。
- リサイクル(再資源化)費用の負担の在り方はどう考えるか?
⇒ 発電事業者から回収するのが現実的ではないか、住宅向けは補助金も必要
- 処理量が増加することで、リサイクルコストは低下するか?
⇒ 処理コストは実態であり詳細な試算はしていないが、7,000~8,000円/kW程度と考えている
- 高度リサイクルに必要な要因はなにか? 新規技術を導入に際しての要望は?
⇒ 積替保管ができる制度、収集運搬でのメリットが大きい
⇒ 易リサイクル性を考慮した製品設計が必要、ガラスの組成情報が開示されていると良い
⇒ 高純度なリサイクル技術を優遇すべき
- 「丁寧な解体」をどのように担保するか?
⇒ 作業において十分な知識を持つ必要がある、ガラスが割れることで労災のリスクは必ず高まる
- 建設リサイクル法との住み分けは?解体方法などにどのように落とし込むか?
⇒ 建設リサイクル法に取り込むと、工事実績のデータとして扱うことができる利点がある
- 板ガラスへのリサイクルにおいて、アンチモンが含有可能な最大量は?
⇒ 実績としては少量のため、利用可能な最大量は現時点では分からない
- リサイクルカレットを使用した場合の採算はどうか?
⇒ ガラスとしての品質が上がる訳ではなく、生産ラインへの投入リスクへの補償などがあると良い
- 板ガラスへのリサイクルの実証で使用したガラスカレット量は?
⇒ ロールアウト式で24トン(新菱で処理)、フロート式で5トン(トクヤマで処理)、既に50トン以上行っている
- フッ素系のバックシートにおいて、PFASへの対応は?
⇒ 銀精錬では問題ない認識だが、シリコン回収まで視野に入れると検討が必要ではないか
第5回の関係者ヒアリング
第4回小委員会では、自治体や太陽光パネルのリサイクル・リユースに関連する業界団体などから、それおぞれの取組みや課題認識・要望などのヒアリングが実施されました。
- 福岡県
- PV CYCLE JAPAN
- 一般社団法人 再生可能エネルギー長期安定電源推進協会(REASP)
- 一般社団法人 太陽光発電協会(JPEA)
福岡県へのヒアリング
福岡県では、地域での先進的な太陽光パネルのリサイクル・リユースの取組みが行われており、これら取組みの紹介やや関係者の課題認識などが報告されています。
- 福岡県での取組みとして「廃棄太陽光パネルスマート回収システム(関連トピック)」「太陽光パネルリユースモデル事業(関連トピック)」を紹介
- 効率的な収集運搬に向け、広域認定制度や積替え保管場所の整備・保管上限の緩和などが課題として挙がっている
- リユースの促進には、安価で信頼性の高い診断方法の確立、リユースパネルの保証・補助金制度、LCA評価によるカーボンクレジットなどが求められる
- 排出量予測の精度向上、施設整備への補助金や許可取得期間の短縮化、再生材(ガラス)の用途拡大などが、資源循環に向けた課題だと認識
- 放置対策については、発電事業を所管する国が直接実施することを要望
PV CYCLE JAPAN(PVCJ)へのヒアリング
PV CYCLE JAPANでは、使用済太陽光パネルのリユース・リサイクルを行うリサイクラーの認定や適正処理ルートの提供を行っており、組織の概要や取組み事例が報告されています。
- PVCJは、EUのPV CYCLE(EUで使用済太陽光パネルの回収を行う)と提携し、リサイクラーの認定や処理の透明性・トレーサビリティの整備、各種実証事業などを実施
- 全国でルート施設(認定を受けたリサイクラー)が7拠点(関連トピック)、会員として自治体・学術機関の他に電力会社や金融機関など多岐に渡る
- 処理におけるトレーサビリティを有価取引になった場合も含めて確保しており、リサイクル証明の発行も可能
- 環境省の実証事業(※)などにて、リユースパネルの寿命診断技術の開発や太陽光パネルの有害物質の情報(DPP)の調査、国際的なルールとの整合・協調のための調査などを実施
- 太陽光パネルの資源循環に向けて「リユース・リサイクルガイドラインの遵守」、「FITでの廃棄等費用積立金の取戻し条件としてリサイクル処理の追加記載」、「リユースパネルの利用推進に向けた施策や補助、ファイナンスの推進」などを要望
(※環境省実証事業:令和5年度国内資源循環体制構築に向けた再エネ関連 製品及びベース素材の全体最適化実証事業 )
再生可能エネルギー長期安定電源推進協会(REASP)へのヒアリング
再エネを長期安定的な電源として普及促進、事業継続と安価でクリーンな電力供給を目指す事業者団体として、発電事業者側としての太陽光パネルのリサイクルへの考え方や課題が報告されています。
- 協会加盟企業へのアンケートでは、88%の事業者がリサイクル義務化賛成、ただし62%は費用増加が無いことが前提と回答
また20%の事業者がリサイクル実施、16%はコスト理由で断念し、64%は実質的に検討していない
- リサイクルの課題として板ガラスへの利用が重要と考えており、再資源利用製造事業者への早期の補助を要望
- 発電事業者として課題解決に向けた中心的役割を担う事が必要・・・発電所の長期稼働、放置対策、発電所撤去時期明確化など
- 発電実績や地域からの情報提供による不健全案件の特定、事業者による所有移転・早期撤去や行政代執行など、放置案件への対策強化が必要
- 発電事業者が負担する再資源化費用額は現行処理相当額を上限が適当であり、再生材の購入義務化やリサイクル処理事業への政府支援を要望
太陽光発電協会(JPEA)へのヒアリング
太陽光発電の普及に向け関連事業者から構成されるJPEAでは、太陽光パネルのリユース・リサイクルにも取り組んでおり、それら取組みや課題が報告されています。
- 3R推進の制度創設に際して「コスト効率性と経済合理性」「持続可能性」「公平性」を基本に検討を進めるべき
最終的には、義務化せずとも経済合理的にリサイクル(再資源化)が進むことが理想
- 再資源化費用は、他個別リサイクル制度も参考に、太陽光発電の特性も考慮した上で対象や負担者、徴収時期を議論すべき
- 解体等費用は、非FIT/FIP設備についても事業性の観点から分割積立が望ましく、放置の件根が少ない住宅用などは積立免除も検討すべき
委員との質疑応答・意見交換(第5回)
関係者からのヒアリングに対して、委員との間で質疑や意見交換がされており、注目すべき内容は以下の通りです。
- 「スマート回収システム」を広域で実施する考え(課題)は? システム運営の費用は?
⇒ 現在は九州全域で行っている、システム運営は公益法人が負担(福岡県)
⇒ 積替え保管の緩和が望ましい(福岡県)
- リユースを進めるにあたっての課題は?
⇒ 価格競争力が弱く、LCAでの差別化などが必要(福岡県)
- 事業者アンケートでリサイクル義務化反対の理由は? 事業リスクと考えられないか?
⇒ 後追いの規制に懸念、海外メーカー負担は結果的に発電事業者が負担することになる(REASP)
⇒ リサイクル義務化は事業開始時に予見できていなかった(REASP)
- 事業者がリサイクル検討後の実施有無の要因は?
⇒ 経済性での判断(REASP)
- 放置案件の判断に必要な情報は? 国・自治体が同取り組むべきか?
⇒ 発電停止・発電量低下や外観(草の放置など)で放置確認、国に依る判断基準が望ましい(REASP)
- リサイクル義務化のデメリットは?
⇒ 義務化のデメリットは、リサイクルのレベルによると考える(JPEA)
- 住宅向けなどで解体等費用積立を免除した場合の仕組みは?
⇒ 放置の懸念は少ないため、再資源化費用の検討は必要(JPEA)
- 既存事業者にも負担を求めるべきか? 生産者負担を求めない理由は?
⇒ 依存事業者への負担は難しく、生産者(パネルメーカー)に遡及できるか議論が必要(JPEA)
まとめ
第4回および第5回の合同会議では、太陽光パネルのリサイクル・リユースの現状や課題に関して、関連事業者や業界団体へのヒアリングが行われました。
リサイクルの義務化や再資源化費用の積立の必要性は総論として認識されていますが、それぞれの立場から多様な課題が提起されています。
特に再資源化費用の負担者や徴収方法、解体から中間処理、再資源化に至るプロセスに関する課題は、事業の採算性、負担の公平性、将来的な技術や費用の不確実性など、複雑な問題が指摘されています。
リサイクル義務化の制度化に向けて、これらの調整が不可欠であり、今後の議論の推移を注視する必要があります。
参考資料