環境省「中央環境審議会 循環型社会部会 太陽光発電設備リサイクル制度小委員会」と経済産業省「産業構造審議会 イノベーション・環境分科会 資源循環経済小委員会 太陽光発電設備リサイクルワーキンググループ」合同会議の第8回が、2024年12月16日に開催されました。
第8回の合同会議では、前回会議の論点整理の内容を踏まえ、今後リサイクルを義務付ける制度化に向けた「太陽光発電設備のリサイクル制度のあり方について(案)」が提示されています。
(前回までの検討会に関してはこちらから ⇒ 第1回、第2回、第3回、第4回/第5回、第6回、第7回)
2012年のFIT制度が始まって以降、太陽光発電を中心に再生可能エネルギーの導入が進み、電源構成における再エネ比率は2011年度の約10%から2023年度には20%超まで倍増、第6次エネルギー基本計画ではさらに36~38%程度とすることが見込まれています。
一方で、太陽光発電の導入拡大に伴い使用済太陽光パネルへの対応が課題となっており、2030年代後半以降に排出量の増加が予想されており、ピーク時には年間50万トンに上るとも推計されています。
第5次循環型社会形成推進基本計画では循環経済への移行を国家戦略として進めていくとされており、使用済太陽光パネルについても再資源化による資源有効利用・付加価値創出により資源循環産業の発展につなげていくことが重要とされています。
これらの背景から、使用済太陽光パネルのリユース促進、再資源化の実施や廃棄・リサイクルの費用確保等を確実に進めるため、発電事業の形態を問わず横串を通す横断的な取組みが求められています。
リユースや再資源化の促進による最終処分量削減と発電事業終了後の太陽光発電設備の放置・不法投棄の防止を図るため、リサイクルを義務付ける制度化への対応が必要とされています。
2030年代後半以降に大量廃棄が想定される使用済太陽光パネルの再資源化が必要な一方で、太陽光パネルの重量比6割を占めるガラス等については市場原理だけでは再資源化が進みづらいことが指摘されています。
また使用済太陽光パネルの再資源化を円滑かつ確実に実施するためには、太陽光パネルのライフサイクル各段階での事業者がそれぞれの責任と役割を担い、相互に連携することが求められます。
これらから廃掃法に基づく適正処理に加えて、再資源化の義務付けにより確実に再資源化が行われる制度構築に向けて、「モノ(太陽光パネル)・費用・情報」の観点から基本的な考え方と具体的な措置が整理されています(第7回を参照)。
リサイクル義務化の対象となる太陽光発電設備(太陽光パネル)が、制度案で説明されています。
またリサイクルに関係する各事業者の役割と責任について整理されており、太陽光発電設備のライフステージ各段階におけるそれぞれの事業者や行政機関などに対して、リサイクルにおける主体的な役割が求められます。
解体等費用は管理責任を有する設備所有者に負担を求めることとし、再資源化費用の負担は製造業者または輸入販売業者に求めることとされています。
費用の支払い時期は、解体等費用は設備の使用開始前までに、再資源化費用に関しては太陽光パネルを上市する時点等に、それぞれ第三者機関へ預託・納付することととされています。
解体等費用
再資源化費用
太陽光パネルのリサイクル義務化に向けた本制度の素案に関して委員からは賛意が示されており、今後パブリックコメントを経た後に法制化されるとされています。
制度の詳細設計に際しては、事業者リサイクル義務化・費用負担と事業性へのバランス、再生可能エネルギー普及のブレーキにならないことや、住宅用太陽光発電設備として導入した個人への十分な周知や配慮を考慮すべきとだと指摘されています。
再エネを進めてきた国の役割・責任を強く求める意見や、オブザーバーからは制度運用に際して事業実態に即した制度設計を望む声が挙げられています。
第8回合同会議では、これまで議論されてきた太陽光発電設備の廃棄・リサイクル制度構築に向けた基本方針をまとめた制度案が提示されました。
この制度案は今後パブリックコメントを経て、来年の通常国会で法制化される予定です。
大量廃棄への対応や循環経済の実現に向けてリサイクルの義務化が求められていますが、太陽光発電事業への負担が事業運営に影響も懸念されており、今後の再エネ普及に向けても大きな制度変更となる可能性があります。
また、静脈産業側では高度な処理技術や再資源化に対するニーズやコスト削減の圧力が増すことも考えられ、新たな技術開発や市場開拓が求められます。
本制度案は近日中にパブリックコメントの募集が開始される予定となっており、持続可能な太陽光発電の実現や適切なリサイクル推進に向けて、関心のある方は意見や提案を行うことをお勧めします。