環境省「中央環境審議会 循環型社会部会 太陽光発電設備リサイクル制度小委員会」と経済産業省「産業構造審議会 イノベーション・環境分科会 資源循環経済小委員会 太陽光発電設備リサイクルワーキンググループ」合同会議の第9回が、2025年3月21日に開催されました。
第9回の合同会議では、第8回で提示された「太陽光発電設備のリサイクル制度のあり方について(案)」について、これまでの議論とパブリックコメントを踏まえたリサイクル制度のあり方が取り纏められています。
(前回までの検討会に関してはこちらから ⇒ 第1回、第2回、第3回、第4回/第5回、第6回、第7回、第8回)
2012年のFIT制度が始まって以降、太陽光発電を中心に再生可能エネルギーの導入が進み、電源構成における再エネ比率は2011年度の約10%から2023年度には20%超まで倍増、先に閣議決定された第7次エネルギー基本計画では2040 年度の電源構成における再エネ比率を4~5割程度(太陽光発電は23~29%)にする見通しが示されています。
一方で、太陽光発電の導入拡大に伴い不適切な管理に対する地域の懸念や使用済太陽光パネルの適正処理への対応など、今後の導入拡大に影響が生じることのないようにする必要があります。
第5次循環型社会形成推進基本計画では循環経済への移行を国家戦略として進めていくとされており、使用済太陽光パネルについても再資源化による資源有効利用・付加価値創出により資源循環産業の発展につなげていくことが重要とされています。
これらの背景から、使用済太陽光パネルのリユース促進、再資源化の実施や廃棄・リサイクルの費用確保等を確実に進めるため、発電事業の形態を問わず横串を通す横断的な取組みが求められています。
リユースや再資源化の促進による最終処分量削減と発電事業終了後の太陽光発電設備の放置・不法投棄の防止を図るため、リサイクルを義務付ける制度化への対応が必要とされています。
2024年12月に素案が提示され、2025年1月16日までの約1ヶ月の間にパブリックコメントが実施され、78名から計255件の意見があったと説明されています。
主な変更点としては以下の3点となります。
法制的な検討結果から、使用済太陽光パネルを再資源化義務化の対象と明確にされており、本文中の「太陽光発電設備」の記載が「太陽光パネル」と変更されています。
これに合わせて、(太陽光発電設備の)「設備所有者」、「解体・撤去」、「解体等費用」が、それぞれ(太陽光パネルの)「所有者」、「取外し」、「取外し等費用」に変更されています。
第三者機関からの再資源化費用の交付先は設備所有者であったものが、再資源化に必要な金額の支払いを担保するために、第三者機関から再資源化事業者への交付へ変更されています。
なお、製造業者又は輸入業者(製造業者等)が再資源化費用を負担することは変更ありません。
また、太陽光パネルの製造から再資源化までのライフサイクルの情報を管理する主体として、「国と第三者機関」が管理(国の関与が追加)
その他、参考資料「都道府県別太陽光パネルリサイクル設備の処理能力とピーク導入量」が見直しされ、令和6年度時点で全国の施設数は67件、処理能力は約11万トン/年とされています。
これまで処理施設の不足が指摘されていましたが、「設備の導入が徐々に進んでいる」という認識となっています。
法制的な検討およびパブリックコメントの結果に基づく変更内容に対して、委員からは概ね賛同が示されました。
一方で、今回の変更点を中心に、一部の委員から懸念事項や今後も継続して検討すべき課題が指摘されています。
再資源化義務の対象を太陽光パネルとすることで、FIT制度における設備全般を対象とする枠組みとの制度間での違いや、設備の解体費用そのものが無視できない点などが課題として指摘されています。
また、太陽光パネルの取り外し後に基礎や架台が放置されないよう規制を設けることも、地域共生の観点から必要だとの意見があります。
再資源化費用の交付方法を変更したことで、再資源化事業者は必要な費用を確実に受け取れるようになります。
一方で、排出事業者(所有者)がコスト削減や再資源化の観点から事業者を選択するインセンティブが低下する懸念も指摘されており、優良な再資源化事業者の認定や情報公開が必要だという意見もあります。
第9回合同会議では、太陽光発電設備の廃棄・リサイクル制度構築に向けた基本方針が示され、パブリックコメントでの意見も踏まえた上で、法制化の観点から最終的な制度案が提示されました。
今回の提言案に基づき、使用済太陽光パネルの再資源化義務化が法制化され、詳細な制度設計が進められる見通しです。
政府が進める再エネ導入・脱炭素化に向けた取組みにおいて太陽光発電は中心的な役割を担うことが期待されており、地域との共生や懸念の払拭が不可欠であり、使用済太陽光パネルの適切なリサイクル・廃棄も求められます。
今後、高度なリサイクル技術の開発やコスト削減のニーズが高まるとともに、再資源化による資源の有効活用や新たな付加価値の創出を通じた資源循環産業の発展が期待されます。