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LiBリサイクルに関する行政動向、業界団体取組み①

(公開:2024-09-16)

2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、再生可能エネルギーの導入や脱炭素に向けた取組みが、官民一体で進められています。
これらの取組みの中には自動車の電動化(EV化)や蓄電池の導入などが含まれ、今後リチウムイオン電池(LiB)の市場普及がさらに進むことが予測される一方で、太陽光パネル同様に将来的な適正な廃棄やリサイクルが課題となります。

本コラムでは、今後課題となるLiBリサイクルに関しての行政の動向や業界団体の取組みなどを、3回に分けて紹介していきます。

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政府動向

政府では、化石燃料中心の経済・社会、産業構造をクリーンエネルギー中心とした経済社会システム全体の変革に向けて、「グリーントランスフォーメーション(GX)」の推進のために「GX推進会議」を開催しています。
蓄電池の市場拡大・技術開発、導入加速へ取組みも検討されており、サプライチェーンのサステナビリティ確保、レアメタル回収・リサイクルも義務化など議論が進められています。

  • 蓄電池の世界市場規模として2030年に約40兆円、2050年に約100兆円を見込む
  • 成長産業として、2030年までに国内製造基盤150GWh、グローバルで600GWhを目指す
  • 定置用蓄電池の2030年目標として、系統用で14.1~23.8GWh、家庭用/業務・産業用で約24GWh
  • サステナビリティ確保として、カーボンフットプリント、人権・環境デューデリジェンス、リサイクルを促進
  • リサイクルの課題として、リサイクル材の付加価値の考え方や、コスト高が課題
蓄電池廃棄量の推計(引用元:内閣府

また、政府はレアメタルの回収や再利用を企業に義務付け、レアメタルの海外流出防止・希少資源確保に向けて、2025年通常国会での資源有効利用促進法改正でリサイクル義務化を検討しているとも報じられています

経済産業省の動向

経済産業省では、過去に「自動車リサイクル」の中で蓄電池のリサイクルなどが議論されてきました。
しかしEV化や定置用蓄電池が普及し始め、循環型経済なども議論され始めた昨今、ここ数年に各種の検討会や協議会が複数開催されています。

産業技術環境分科会

産業技術環境分科会の「資源循環経済小委員会」「自動車リサイクルワーキンググループ」でLiBリサイクルに関しての議論がされています。

資源循環経済小委員会

  • 産業技術環境分科会の小委員会として「資源循環経済小委員会」が開催(2023年9月~)
  • 成長志向型の資源自律経済の確立に向けた制度設計の議論、資源制約・環境リスクと成長機会の両立
  • 日本自動車工業会によるLiBリサイクルへの取組み状況の報告(第5回)
     ⇒ 全国でリサイクル施設が12ヶ所稼働中
  • 電池サプライチェーン協議会によるLiBリサイクルスキームの報告(第6回)
     ⇒ 「リサイクルスキーム提案TF」が動静脈企業32社で構成

自動車リサイクルワーキンググループ

  • 資源循環経済小委員会のWGとして「自動車リサイクルワーキンググループ」が開催
  • WGでは自動車リサイクルの実施状況が定期的に報告されている
     ⇒ 第56回(2021年10月29日)以降、蓄電池リサイクルの状況や取組みが報告されている
     ⇒ 日本自動車工業会によるLiBリサイクルの取組み状況
     ⇒ リサイクルシステム、中長期方針、回収実績、リサイクル施設など
  • 自動車リサイクルの広域認定範囲を、自動車用LiBから定置用蓄電池にも認定拡大を要望
蓄電池のサステナビリティに関する研究会

蓄電池のサステナビリティに関する研究会」が、2022年1月から2023年4月の計4回開催、現在は「蓄電池産業戦略検討官民協議会」の分科会に改編されています。

  • 研究会第2回(2022年3月25日)において、蓄電池のリユース・リサイクルに関する議論
     ⇒ 自動車リサイクルのおけるフロー、欧州電池規則、使用済の液LIBの輸出に関連する規制
  • リサイクル技術開発や拠点整備に向けた支援が紹介
蓄電池産業戦略検討官民協議会

蓄電池はEV化/再エネ主力電源化の最重要技術として官民協議会が開催され、問題共有/競争力奪還に向けた「蓄電池産業戦略」が2022年8月に公表、「蓄電池産業戦略推進会議」が2023年9月に立上げられています。

  • 蓄電池産業戦略に関するロードマップとして、2030年にリサイクルシステムを確立
  • 蓄電池リサイクルに関わる業界団体による取組みや課題の説明、要望など
     ⇒ 電池サプライチェーン協議会:「BASC 10の提言」、研究開発や施設導入への補助要望
     ⇒ 日本電機工業会:「住宅用リチウムイオン蓄電システムの共同回収スキーム」を2020年5月に開始
     ⇒ 電池工業会:目指す姿として、消防法の規制緩和や回収義務を徹底
  • リサイクル普及にBMの標準化や輸入拡大、デジタルスキームの構築など、BM市場創造が必要

蓄電池産業戦略推進会議

第1回会議が2023年9月29日に開催され、国内環境整備としてリサイクルでの課題などが指摘されています。

  • 国内で製造・使用される車載用蓄電池のうち、中間処理までたどり着くものは約15%程度
  • レアメタルを含む中間材(BM)の回収は、使用済蓄電池だけを熱処理するケースのみ
  • 国内でのレアメタルのリサイクルは、技術開発・実証レベルで商用化には至っていない
  • リサイクル材利用の付加価値が定まっておらず、バージン材に比べコスト高でリサイクルが進まず
  • 中韓では積極的なリサイクル事業への投資により、大規模リサイクル工場の建設・量産体制が進む
その他検討会

その他「定置用蓄電システム普及拡大検討会」や「成長志向型の資源自律経済デザイン研究会」などで、LiBやそのリサイクルに関しての議論がされています。

定置用蓄電システム普及拡大検討会

家庭用、業務・産業用、再エネ併設・系統用それぞれの蓄電システム普及に向けた議論がされているものの、廃棄・リサイクルに関しては現時点では取り上げられていない模様です。

成長志向型の資源自律経済デザイン研究会

循環経済から更に踏み込んだ「成長志向型の資源自律経済の確立」に向け、資源循環経済政策の再構築、供給途絶リスク回避、国内資源循環システムの自立化・強靱化などが議論されています。
資源循環における資源需要や制約などが紹介されており、蓄電池リサイクルでの課題が紹介されています。

  • 大手企業は長年の技術蓄積を用い高温処理炉を主軸とした大量処理プロセスを構築
  • スタートアップは小型・迅速な立ち上げを目指して湿式処理を乱立(日本では目立った動きなし)
  • それぞれ独自のLCA合戦によって正当性を主張
  • 投資家からの注目を集めつつある一方、正極材粉2次資源市場が国内に安定して形成されるかは未知数(高リスク)

経済産業省による委託調査や補助金

委託調査報告書

リチウムイオン電池や資源関連の委託調査報告書の中で、LiBリサイクルに関しても調査されています。

これら調査事業の他にも、蓄電池やEVに関する各国政策・規制や産業動向、蓄電池材料を含む資源循環などの報告書が多数公開されています。

補助事業

NEDO委託事業やリサイクル技術の実証・開発などで補助事業が実施されています。
蓄電池リサイクルに関しても補助対象となっている事業もありますが、現時点では採択実績は少ない模様です。

  • 資源自律に向けた資源循環システム強靱化実証事業(令和4年度、令和5年度)
  • 資源自律経済システム開発促進事業(NEDO委託)
  • 蓄電池等の製品の持続可能性向上に向けた基盤整備・実証事業(令和6年度)
  • 蓄電池の国内生産基盤確保のための先端生産技術導入・開発促進事業(令和3年度、令和4年度)
  • 無人自動運転等のCASE対応に向けた実証・支援事業費補助金(令和4年度、令和5年度)
中小企業庁による補助金

中小企業庁が実施する「ものづくり補助金」「事業再構築補助金」でも、LiBリサイクル(リユース)に関する採択が確認できます。
しかしながら、ものづくり補助金で4件、事業再構築補助金で9件しか採択が確認できず、太陽光パネルのリサイクル・リユースに比べると非常に限定的となっています。

まとめ

脱炭素化を進める技術として再エネの導入やEV化などが求められていますが、一方で新たな資源消費に伴う環境への影響や経済安全保障などの視点も重要です。
リチウムイオン蓄電池でもリサイクルの必要性が議論されており、政府においても成長産業として蓄電池産業全体のサプライチェーン確保に向けた取組みが進んでいます。

次回のトピックでは、LiBリサイクルに関する環境省や自治体の取組みを紹介します。

その② ≫≫

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参考資料