(公開日:2021-10-01)
経済産業省の小委員会「調達価格等算定委員会」「新エネルギー小委員会(太陽光発電設備の廃棄等費用の確保に関するワーキンググループ)」にて議論され、2020年6月に制定された改正再エネ特措法及び同法の規定において、廃棄等費用の積立制度が創設されることとなりました。改正再エネ特措法及び同法の規定を踏まえて、2022年4月1日に改正される予定の「改正再エネ特措法施行規則(電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法施行規則、平成24年経済産業省令第46号)」に基づく積立てに関する業務を実施するに当たり、資源エネルギー庁が「廃棄等費用積立てガイドライン」を公表しました。(関連トピック①、関連トピック②)
今回は太陽光発電設備の廃棄費用積立に関してのポイントを整理していきます。
2012年に再生可能エネルギーの固定買取価格制度(FIT制度)が導入されたことにより、再生可能エネルギーの中でも中でも太陽光発電事業を中心に導入が急増しました。一方で太陽光発電事業は参入障壁が低く、様々な事業者が取り組むことに加え事業主体の変更が行われやすいことや、太陽光パネルには鉛・セレン等の有害物質が含まれていることなどから、発電事業の終了後に太陽光発電設備が放置・不法投棄されるのではないかといった懸念が指摘されてきました。
FIT認定の際の事業計画策定ガイドラインには廃棄費用の積立を遵守事項とし、定期報告において積立の進捗状況の報告を義務化しています。しかし積立水準や時期は事業者の判断にゆだねており実際の積立進捗状況は低水準となっていました。
再生可能エネルギーが今後主力電源化されることから、地域との共生や長期安定的な事業運営を図るため、太陽光発電設備の廃棄等費用については原則として源泉徴収的な外部積立てとして制度化されます(長期安定発電の責任・能力を担うことが可能と認められる事業者に対しては内部積立ても認められます)。
改正再エネ特措法及び同施行規則において、適用対象は以下の事業者に適用されるとあります。
FIT認定を受けた10kW以上のすべての太陽光発電設備の事業者が対象になるといえます。
解体等積立金の額は、FITの認定時期および調達価格で規定されています。それぞれの時期における設備利用率や廃棄費用として想定される額に基づき、積立水準が決められています。
外部積立期間10年間の拠出額は、1MWのメガソーラーの場合以下の通りに概算できます。
積立金額もさることながら導入年度によっては金額に2倍近い違いがあることが分かります。
一方でNEDOにより実施された太陽光発電リサイクル技術開発プロジェクトでは、撤去・廃棄費用の目標を『15円/W以下』と掲げており、1MWあたり1500万円以下の費用となります。
廃棄費用を積立てた場合においても、廃棄費用が確保できるかは個々の発電所において精査する必要が事業者に求められます。
外部積立ては「認定事業者」、「買取義務者」および「推進機関(電力広域的運営推進機関)」の間で行われます。FITによる売電から源泉徴収的(天引き)に積立てられ、買取事業者から推進機関に積立金が積み立てられることになります。
それぞれの主体間で相殺的処理が行われるため、ガイドラインでは会計処理等に関しても具体的な方法を説明しています。
ガイドラインではその他の内容として、以下の事項に関する記載もあります。
これらに関しては、個別の事業者・事例において十分理解する必要があります。
廃棄等費用積立ガイドラインに関して制度のポイントの概略を取り上げました。ポイントとして以下の内容があげられます。
太陽光パネルのリサイクル技術など産業廃棄物としての処理する技術開発がこれまで進んできましたが、廃棄費用などの排出事業者側の課題がこれまで懸念されてきました。
撤去・廃棄において、特に重要となる費用面での担保が今回の制度で確保することになり適切な廃棄処分が推進されるのに合わせて、処理業者側としての事業不確実性が減るものと思われます。
今後新たな事業機会として、太陽光パネルのリサイクルが拡大する契機になることが期待されます。