太陽光パネルリサイクルの情報を掲載しております。

リサイクル技術の開発プロジェクト

(公開日:2021-03-17)

太陽光パネル(太陽電池モジュール、ソーラーパネル)および太陽光発電設備のリサイクル技術開発は、行政や公的な研究機関を中心に進められてきました。
以下では経済産業省、環境省、および新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)における代表的な技術開発プロジェクトを紹介します。

NEDOによる技術開発プロジェクト

NEDOでは『太陽光発電リサイクル技術開発プロジェクト』を平成26年度から平成30年度の5年間、計10.2億円の費用をかけて実施されました。本技術開発は、太陽光発電の普及に伴う将来の大量の廃棄物発生の適正処分を実現する技術・システムを確立することを目的としています。さらに太陽光パネルから有価物を分別・回収する技術開発に加え、より広く市場の動向や将来予測などの研究・調査なども行われました。

【プロジェクトでの研究開発項目】

  • 低コスト撤去・回収・分別技術調査
  • 低コスト分解処理技術FS(開発)
  • コスト分解処理技術実証
  • 太陽光発電リサイクル動向調査
  • 使用済み太陽電池モジュールの低コストリユース技術の開発
NEDO研究開発のスケジュール
研究開発のスケジュール(引用元:NEDO

本プロジェクトでは、最終目標としてリサイクル(分解処理)の年間200MW処理時の分解処理コスト『5円/W以下』を実現する技術の確立を掲げています。

処理費用の長期的目標値



処理費用の長期的目標値(引用元:NEDO)

本プロジェクトにより、埋立費用は243~404億円の削減、CO2排出量は490,000tの削減が可能となると試算されています。また鉛など有害物質が含まれるために埋立が不可能な廃棄物の適正処分が期待できるとあります。

技術開発プロジェクトの成果

研究開発項目のうち、既存技術調査やFS(Feasibility Study、実行可能性調査)を除く3項目に関して、以下の成果を得たとあります。

①太陽光発電リサイクル動向調査

  • 排出量推計モデルを構築すると共に排出量推計の精緻化し、経済産業省から公表
  • 海外諸国におけるリサイクル技術の開発動向を継続的に調査、状況の把握

②低コスト分解処理技術実証

  • 分解処理方法として、『粉砕+色彩選別法』、『ホットナイフ法』、『パネルセパレータ法』、『熱分解法』を開発
  • 上記の処理方法で、年間200MW処理時の分解処理コスト『5円/W』以下を実証

③使用済み太陽電池モジュールの低コストリユース技術の開発

  • 太陽電池モジュールの低コスト修復技術を開発、リユースの評価方法を確立
  • 2030年に180円/枚以下を達成できる低コスト化を見通せることを確認

特に太陽光パネルの適切なリサイクルに寄与する『②低コスト分解処理技術実証』に関しては、開発に携わったいくつかの企業で装置の事業化まで実現しました。

リサイクル技術マップ



リサイクル技術マップ(引用元:NEDO)

NEDOは本研究開発での成果を踏まえ、「太陽光発電開発戦略2020」(関連ニュース)の中で、今後の課題として以下の必要性を指摘しています。

  • 太陽光発電設備から太陽電池モジュールを非破壊、低コストで撤去する技術の開発
  • リサイクル技術と連携した太陽電池モジュールの回収制度の構築
  • 処理を行ったガラスの水平リサイクルと新規用途開拓

一方で、リサイクルの課題解決と市場ニーズの高まりを想定し、NEDOの技術開発には参加せず独自技術を自社開発しリサイクル装置を上市している企業も複数あります。

その他の実証事業・調査等

NEDOによる研究開発は期間・予算も規模の大きいものであり、リサイクル技術開発の中心となりましたが、環境省や経済産業省、産業総合技術研究所などでも、調査研究や技術開発などが実施されています。

【環境省】
太陽光発電設備等のリユース・リサイクル・適正処分に関する報告書
使用済再生可能エネルギー設備の検討概要
低炭素型3R技術・システム実証事業
地域循環拠点(エコタウン等)高度化モデル事業 廃太陽光発電パネルの広域収集網の連携に係るモデル事業(平成29年3月)

【経済産業省】
平成31年度エネルギー需給構造高度化対策に関する調査等事業最終報告書
 (太陽光発電設備における廃棄等費用の確保等に関する調査)

【産業総合技術研究所】
・令和2年度被災地企業等再生可能エネルギー技術シーズ開発・事業化支援事業
  廃棄太陽光発電パネルガラスの有効資源としての利用促進に関わる研究開発

まとめ

NEDOを中心とした技術開発や自社開発により、既に数社が太陽光パネルのリサイクル技術を確立し、装置の実用化を実現することができました。
さらに将来的に太陽光パネルの大量廃棄を迎えるには、分解処理コスト『5円/W』以下を達成していく必要性があります。コストダウンに向けた技術開発が装置メーカーに求められる一方で、今後メーカーが淘汰されていくことも考えられます。
またこれまでの研究・技術開発がリサイクル技術に重点が置かれていたこともあり、廃棄が発生する現場での解体・撤去、回収スキーム、リサイクル後のガラスの利用法などが今後の課題となります。
リサイクルガラスの有効活用として一部産総研により研究が実施されていますが、今後は解体、収集から資源循環までを、低コストかつ脱炭素で実現する技術やビジネスモデルが求められます。

参考資料